チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2015年10月5日
15歳の僧侶がンガバで1人デモ/7年後、拷問で健康を害した政治犯が解放される
15歳の僧侶がンガバで1人デモ
先月辺りから、焼身のメッカであるアムド、ンガバでチベット人による1人デモが連続している。今日(10月5日)、ダラムサラ・キルティ僧院の内地連絡係りである僧ロプサン・イシェと僧カニャク・ツェリンは、新たに9月中にデモを行った3人の消息を明らかにした。
それによれば、9月23日、現地時間午後4時頃、ンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・ジャミヤン、15歳が、焼身者が多い通りとして地元のチベット人たちから「勇者の道」と名付けられている僧院近くの道から大通りにかけ、「チベットには自由が必要だ!ダライ・ラマ法王をチベットへ!」と叫びながら、歩いた。直ちに警官が駆けつけ、彼はその場で拘束された。その後の消息は不明のままという。
僧ロプサン・ジャミヤンはンガバ県メウルマ郷第二村の出身。父の名はチュペル、母の名はツォモ。幼少時よりキルティ僧院の僧侶という。
さらに、それ以前の9月10日には、同じくンガバの中心街で、ンガバ県チュゼマ郷ソル村出身の俗人であるティンレーとロプサンと呼ばれる2人のチベット人の若者が、「チベットには自由が必要だ!ダライ・ラマ法王に長寿を!」と叫び、警官に拘束された。彼ら二人の消息も依然不明のままという。
ンガバでは9月10日以来、政府関係以外のネットが全て遮断されたままという。また、路上には普段より大勢の部隊が展開し、厳しい検問が続いている。
参照:10月5日付Tibet Times チベット語版 http://tibettimes.net/རྔ་པའི་ཞི་རྒོལ་བ་གསུམ་/
健康を理由に政治犯が解放される
先の9月30日、甘粛省の刑務所からラキャップというチベット人政治犯が解放された。彼は2008年の春、甘粛省甘南チベット族自治州マチュで反政府デモに参加したとして刑務所に収監されていた。最初2年の刑を受け、その後刑期が終わっても解放されず、さらに3ヶ所の刑務所に送られ、その間に様々な拷問を受けたという。
「彼は肺に関係する健康を理由に解放されたのだ。拘束中に受けた長期に渡る拷問が原因だ」と匿名希望の現地のチベット人は伝える。
逮捕された時には17歳だった彼は今25歳になり、やっと解放された。もっとも、刑務所側も彼に治療を施したが、効果がなく、悪化するばかりなので、刑務所の外に出すことに決定したといわれる。病名は伝わっていない。
「彼の父親は、息子が刑務所で拷問を受けていることを知り、心配が高じ、死んでしまった」と村人はいう。
地元の人々は彼を勇者として熱く迎え入れたという。
参照:10月2日付RFA英語版 http://www.rfa.org/english/news/tibet/freed-10022015162835.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)