チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2015年5月30日
タウ県で20日焼身のテンジン・ギャンツォ死亡確認/同県県長「焼身したい者にはガソリンを支給してやる」
先の5月20日、四川省カンゼ州タウ県で焼身抗議を行ったテンジン・ギャンツォ(35)の生死は数日間不明のままであったが、その後亡命側に伝えられた情報により、彼が次の日までに亡くなっていたことが判明した。
RFAが亡命タウ出身者が得た情報として伝えるところによれば、「当局は木曜日(5月21日)の午後3時ごろギャンツォの家族に電話をかけ、彼が火傷の結果死亡したことを伝えた。そして、家族に遺体を処理するためにダルツェンドに来るようにと命令した」という。
しかし、現地の人たちは「どうせ家族がダルツェンドに行っても、これがギャンツォの遺灰だというものが渡されるだけだろう」と噂しているという。
焼身したい者にはガソリンを支給してやる
テンジン・ギャンツォが焼身し、部隊が消化器で火を消し、彼を連れ去ろうとしたとき回りにいたチベット人たちはこれを阻止しようとして部隊と衝突した。その結果、10人が拘束された。彼らはその後激しい拷問を受けたことが写真と共に伝えられている。
22日には地元の有志が集まり、拘束された男性6人、女性4人の計10人の開放を求め、なぜ焼身が起こるかを説明するために庁舎に向かい、県長と面談したという。ロンドンベースの人権団体フリーチベットによれば、このとき県長はその返答として「焼身したいやつにはガソリンを支給してやる」と言ったという。
タウでは焼身を防ぐという名目の下、ガソリンを買うチベット人すべてに身分証明書の提示を義務づけている。
24日にはタウのニャンツォ僧院で僧院長と各村の代表者が呼びかけ人となり千人規模の抗議集会が行われた。
新たにタウの県長に就任した党委員会書記はこの焼身を機会に、地域のチベット人に対する厳しい弾圧キャンペーンを開始。「分裂主義活動家」を洗い出し、ダライ・ラマ法王の80歳誕生日を祝うイベントを計画していそうな者たちを次々と拘束していると伝えられる。
「当局は同時にダライ・ラマの誕生日を祝わないという書面にサインすることを住民たちに強要するということを始めた。これを拒否した者は激しい暴力を受け、頭を剃られている」と現地から報告される。さらに「住民を威嚇する目的で武装警官や軍隊が盛んに街中を行進を行っている」という。
在ダラムサラのタウ出身元政治犯ロプサン・ジンバは「すでに80人以上が拘束され、今も拷問を受け続けている」、「このまま厳しい弾圧が続けば、新たな大きなデモがおこるかも知れない」とコメントする。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)