チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年12月29日
同郷の焼身者に捧げる詩を発表した学生作家拘束
12月28日、現地時間午後4時頃、ンガバ県メウルマ郷からバスでンガバに向かっていた作家、ブロガーとして知られるメウ・スパ(རྨེའུ་བཟོད་པ།)、21歳が武警と警官により拘束された。拘束は暴力的に行われたと伝えられ、彼が携帯していた書籍等も押収された。
彼がなぜ拘束されたのかについては明白ではないが、この事件を伝えた同じメウルマ郷出身グチュスンの会書記のメウ・クンガムは、「彼は22日に焼身した同郷のツェペ・キへ捧げる『勇女 ༼དཔའ་མོ།༽』と題された中国語の詩をブログに発表したり、『自由のために拳を空に振り上げ ༼རང་དབང་གི་ཆེད་དུ་ལག་པ་གནམ་ལ་ཕྱར་བ། ༽』と題されたチベットの自由と焼身に関する文章をブログに発表していたことが、当局により政治的と判断され拘束されたのではないか」という。その他、彼はこれまでに地元で言論の自由を議題とする討論会を開催したりしていたという。
2008年、チベット全域で自由を求めるデモが連続した後、ンガバ地区から政治教育を受けさせるために18歳以下の若者が選ばれ強制的に成都に送られたが、その中に彼も入っていた。その後、彼は蘭州にある西北民族大学に入学し、現在2年生である。
メウ・スパは幼少時、ンガバ・キルティ僧院の僧侶であった。最近バイクの事故により、足を悪くし、今も杖を使い歩く状態であるという。彼はンガバ県メウルマ郷第3村の出身。父の名はゴンボ、母の名はペコ。
また、ンガバでは26日、ンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・ルンリク(བློ་བཟང་ལུང་རིགས།20)が僧院から突然警官により連行されている。彼もメウルマ郷の出身である。連行された理由は不明。
参照:12月29日付けTibet Timesチベット語版
12月29日付けphayul
12月29日付けTCHRDリリース英語版
追記:メウ・スパが同郷の焼身者ツェペ・キに捧げた詩(原文中国語)の日本語試訳(K氏訳)。
誰が、暗闇の中で自らを燃やすのか?
最後の力で雪の国を照り輝かせる!
誰が、火焔の中に己を捧げるのか?
最後の思いが高原に留まる!
誰が――それは勇敢な使者、それは真理の化身!
貴方は去られた、その身体を祈りと真理に化して、雪の国に広めるために!
貴方は去られた、すべての抑圧と苦しみとともに。
貴方は去られた、一千万人があなたとともに祈る……
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)