チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2014年11月16日

生き残ったある焼身抗議者の証言

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image(写真左)2013年2月25日、アムド、ケンロ、ルチュにあるシツァン僧院前でツェスン・キャプ27歳が焼身抗議をした時のもの。

11月8日付けRFAチベット語版で、ある焼身者が直接電話越しに話ている声が流された。彼は焼身の理由を語った。氏名、場所、時間は伏せられている。焼身後生き残り、比較的緩い中国の監視下に置かれている人と思われる。

アムド訛りと思われるその声は特定できないように擬声化され、解説者にもアムド訛りがあり、放送を聞いただけでは私にはすべてを正しく把握することができなかった。そのRFAの記事はほぼ放送のみのものだった。私はチベット語で起した記事がどこからかでるだろうと思い、それを待っていた。しかし、他のチベット系メディアは私の知る限り、彼の話をまだ文章に起していないようだ。チベット語の前に14日、ロンドンベースのFree Tibetという団体が彼の証言の英訳を発表した。以下、その英訳を参照し、再び元の放送分を聞き直して訳したものである。

これまでにも、生き残った焼身者の話は伝わっている。しかし、それらはすべて中国当局が制作した「プロパガンダ焼身映像」の中であり、火傷を負い、病院に収容されている焼身者が、「後悔している」と語るというものだ。生き残った焼身者が本心を語ったその声が公にされたのは、これが初めてと思われる。貴重な証言と言えよう。実は、私も元焼身者と直接会い話を聞いているが、まだ発表できるとは思えない。

私は21世紀の普通の人間です。今、世界のほとんどの人々や国々は繋がり合い、それぞれの国で自由と人権を享受し、人々も国も発展の恵みを享受しています。

しかし、1人のチベット人である私には国も自由もありません。たくさんの不幸を経験しました。ラサに巡礼に行った時、ポタラ宮殿とジョカン寺が中国の軍隊に囲まれているのを見ました。巡礼も許可証なしにはできません。許可証を得るには時間がかかります。軍服の上に僧衣を纏い偽装している軍人が大勢いることに気づきました。

自分の目で見、味わった経験を元に、私はこのような環境の中に生きるぐらいなら死んだ方がましだと思うようになりました。私は来生、来々生と、常にダライ・ラマ法王と共にあらんことを祈りました。

他の国に比べ、私たちには宗教の自由と言論の自由がなく、私たちの精神的指導者は祖国に帰ることができないのです。弾圧は続きます。私はこのような弾圧下の苦しみに耐えることがもうできないのです。私は焼身抗議を行おうと思いました。私は十分燃えることができず、焼身は失敗に終わってしまいました。今、私はどこへも行けず、すべての生活を人に頼るしかない状態です。

私の今の望みは(ダライ・ラマ法王が選んだ)パンチェン・ラマ11世が解放され、ダライ・ラマ法王とパンチェン・ラマが会合できる日が早く来ること、すべての政治犯が解放されることです。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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