チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年11月9日
キルティ僧院僧侶2人の刑確定
(写真左)頭上にダライ・ラマ法王の写真を掲げ1人抗議デモを行う僧ロプサン・テンパ。
昨夜久しぶりに、ダラムサラ・キルティ僧院の内地連絡係ロプサン・イシェとカニャック・ツェリンからチベット語のメールが届き、最初「う、焼身か?!」と思った。これまで彼らからのメールのほとんどは焼身の第一報であったからだ。
が、読み進むとそうではなく、今年4月に別々にンガバで1人デモを行ったキルティ僧院の僧侶2人の刑が確定したという話であった。ンガバでは焼身はこのところ途絶えていると言えそうだが、激しい拷問と懲役刑を覚悟した1人デモは続いているようだ。
そのメールによれば、今月7日、四川省ンガバ州バルカム県の中級人民法院が、ンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・ギャンツォ(20)とロプサン・テンパ(19)に国家反逆罪でそれぞれ3年と2年の懲役刑を言い渡した。
ロプサン・ギャンツォは今年4月2日、ンガバ県ンガバの中心街の路上において、手に自分で描いたチベット国旗を持ち、「チベットに自由を!ダライ・ラマ法王がチベットにお帰りになりますように!」と叫んだ。その場で逮捕されることを逃れ、彼は僧院に身を隠していた。4月15日、彼は僧院で逮捕され、その後拘留中長期間拷問を受け続けたと言われる。裁判には家族が呼び出されたが、弁護人を付けることは許されなかったという。
ロプサン・ギャンツォはンガバ県メウルマ郷第3村の出身。父ベツェ、母シチュンの息子。幼少時にンガバ・キルティ僧院の僧侶となり、現在第9学年。
もう1人のロプサン・テンパは今年4月26日、同じくンガバの路上で額に雪山獅子旗(チベット国旗)を描いた布を巻き、頭上にダライ・ラマ法王の写真を掲げ、こちらも1人でデモを行った。彼はその場で逮捕された。彼もロプサン・ギャンツォと同様の要求を叫んだ。裁判までのその後のいきさつもロプサン・ギャンツォと同様である。
ロプサン・テンパはンガバ県メウルマ郷第2村の出身。父の名はダクチュン、母の名はドルマ・チュコ。兄が2人いて、何れも僧侶。上の兄は南インドのデブン僧院で勉学中、もう1人の兄はンガバ・キルティ僧院僧侶。彼も幼少時にンガバ・キルティ僧院の僧侶となり、現在第9学年。
今年ンガバではこれまでに2人焼身している。2月13日には元ンガバ・キルティ僧院僧侶のロプサン・ドルジェ、25歳が、3月16日にはンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・パルデン、20歳が、何れもキルティ僧院近くの「勇者の道」の上で焼身、死亡している。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)