チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年9月9日
ビデオで拷問を暴露した僧ジグメ・ギャンツォに5年の刑 失踪3年後
アムドの名刹ラプラン・タシキル僧院の僧侶ジグメ・ギャンツォは2006年以来4度拘束されその度に拷問を受けていた。最後に拘束されたのは2011年8月20日、それ以来3年間以上行方不明のままとなっていた。
9月8日付けRFA等によれば、9月5日甘粛省の裁判所においてついに彼に判決が言い渡された。国家分裂扇動罪で5年の刑とされた。裁判に家族は呼ばれず、弁護士も付かない秘密裁判であった。
ジグメ・ギャンツォは2008年に逮捕された後、どのような拷問を受けたかをビデオを通じ詳しく伝えた。このビデオは最初VOA、次にyoutubeを通じて広まり、多くの人が彼の証言を聞いた。日本語訳もあることだし、まだ見ていない人は是非このビデオをみてほしい。
ビデオ
日本語訳
突然車に引き込まれ、頭に黒いずきんを被らされ、拘置所に連行された後、自動小銃を突きつけられ、「これはお前たちチベット人を殺すためのものだ。少しでも動けば、必ずお前を撃って殺してやる。死体をゴミ箱に捨ててやる。誰も気付きはしない」と脅される。その後2ヶ月間、彼は激しい拷問を受ける。天井から吊るされ意識を失うまで暴行を受けた。意識を失う度に病院に運び込まれ、意識が戻るとまた拷問を受ける。「まるで人を殴っているのではなく、ブタや犬を殴るような」暴行を受けた、と証言。
このビデオを製作したとして2008年11月に再び逮捕され、翌年5月に解放された。そして、また去年8月20日にツォエ(ツゥ 合作)のホテルで拘束される。詳しくはこことここ。
その後消息が途絶え、危惧されていたが、2012年10月12日付けTibet Netが消息を伝えた。それによれば、彼は心臓、肝臓等5種類の重い病を患い、蘭州の刑務所内病院で治療を受けていたという。彼の親族は当局に対し、病気を理由に解放を懇願したが、拒否された。親族はさらに病気が悪化しこのまま監獄で死ぬのではないかと心配していた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)