チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年9月8日
ディル<>ナクチュ間に厳しい検問所8カ所 苦しむ通行者たち
チベット自治区ナクチュ地区のディルでは去年9月に愛国高揚キャンペーンが始まり、これに反発するチベット人住民に対し当局が無差別発砲を含む厳しい弾圧を行った結果、これまでに少なくとも3人が銃殺され2人が拷問死している。これまでに拘束されたチベット人の数は1000人を越えるとされる。
最近伝えられた情報によれば、当局はディル・ナクチュ間270キロの国道上にこれまで4カ所あった検問所を倍の8カ所に増やし、厳しい監視を行っているという。検問に不満を示した運転手や乗客は激しい暴力を受け、路上で休憩のために停止すれば高額の罰金を払わされ、救急車まで停止される状態という。
「ディルの状況は改善されていない。規制、検問、弾圧は続いている」と匿名希望の住民は伝える。
「これまでディルからナクチュへは4時間で行けたが今は7時間かかる」
「運転手の書類は厳しくチェックされ、運転手や同乗者が少しでも不満な態度を示すとすぐに車から引き出され激しい暴力を受ける。運転手の中には拘束され15日から20日間の『再教育セッション』を受けさせられる者もいる」
「警察はこの区間で厳しいスピードチェックを行い、また検問所以外で運転手が休息のために車を止めることを禁止している。もしも、これに違反したときには7千元(約12万円)という法外な罰金が課せられる。これが払えないときには免許証その他の許可証が取り上げられる」
「重傷・重病人をディルからナクチュの病院に運ぼうとする救急車も検問で止められ、搬送時間が長くなるのも大問題だ」
「これらはディルの住民に課せられた規制のほんの一部だ」とディルのチベット人は訴える。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)