チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年7月18日
中国の僧院弾圧に抗議しチベット人僧侶自殺
7月17日付けRFAによれば、アムド、サンチュ(甘粛省甘南チベット族自治州夏河県)にあるラプラン・タシキル僧院の若い1人の僧侶が、中国政府の宗教弾圧、特に僧侶の数を制限する等の僧院に対する規制に抗議する目的で自殺したという。
7月9日、僧タプケཐབས་མཁས、24歳は僧院を前にした森の中(RFA中国語版では「僧坊」)で首を吊った姿で発見された。
ある現地のチベット人は「彼は5歳の時からラプラン・タシキル僧院で学び続けていた。しかし、当局の僧院における僧院数制限という政策の下で、彼は僧院が行う法要に参加することができなくなっていた。他にも僧院に対し様々な制限が課されているが、これを苦にして自殺したのだと思う」と話す。
自殺する直前に僧タプケは友人に思いを語っていたという。「自分は5歳の時にラプラン僧院で僧侶となり、これまで19年間、精一杯勉強に精進し、慎ましく暮らし、おとなしく規則に従ってきた。しかし、当局は僧侶の数を制限し、これにより自分は法要に参加できない。中国はチベットの僧院に自由を与えず、様々な仕方で規制をかけ、弾圧している。僧院数制限に反対し、チベットの宗教を破壊する政策に抗議するために自分は1つ仕事をするつもりだ」と。
他の現地の人は「現在当局はラプラン・タシキル僧院の僧侶の数を999人までと決めている。僧侶は根本のラマ(ダライ・ラマ法王)の写真を持つことも許されない。いろんな困難に遭って僧侶を辞める者もいる。僧タプケが自殺したのは、チベット人と特に僧院に対する宗教弾圧が原因だ」という。
僧タプケはサンチュ県ンガクパ村の出身。父の名はジクチェ・キャプ、母の名はデキ・ドルマ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)