チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年7月11日
カム、セルタで僧侶が1人デモ
7月10日付けRFAによれば、7月9日現地時間正午頃、四川省カンゼチベット族自治州セルタ県セルタ(སེར་རྟ། 色達)の中心街で1人の若い僧侶がスローガンを叫びながらチラシを撒き、その場で逮捕されたという。
この僧侶の身元はセルタ・ヌプセル僧院のシェルキャプ(ཤེར་སྐྱབས།)20歳と判明した。現地からの報告によれば、「彼は街の中心にある金馬広場で『ダライ・ラマ法王はチベットに帰還されるべきだ!チベットには自由が必要だ!』と叫びながら、沢山のチラシを撒いた。5、6分後、大勢の警官が駆けつけ、彼を逮捕した」という。
また、「セルタ県警察署に連行された後、どうなったかは分からない。今、セルタ地区のネットは遮断されている」という。
僧シェルキャップは最近セルタにあるラルンガル僧院(五明仏学院)で学んでいた。ヌプセル僧院はセルタから20キロ離れており、この僧院には500人の僧侶が所属していることになっている。しかし、実際には外で学ぶ僧侶が多く、現在僧院には100人ぐらいの僧侶がいるだけという。
2012年2月のデモの際、部隊に荒々しく引きずられるチベット人。
このセルタの、特に金馬(セルタ)広場では2008年以降様々なチベット人による抵抗活動が行われている。2012年2月には大規模な抗議デモに対し部隊が無差別発砲したことにより、少なくとも2人が死亡し、大勢が負傷した。
2012年11月にはワンギェル(20)がこの広場で焼身抗議を行い、死亡した。その前2012年3月には17歳の中学生がこの広場で焼身を企て、多量のガソリンを飲んだ。が、飲み過ぎたのかその場で意識を失い倒れ、連行されたという事件もあった。
ちょうど昨日、カンゼ辺りを最近旅行したという1人の日本人旅行者が現地の様子を知らせてくれた。先のブログで当局が、7月6日の法王誕生日や現在ラダックで行われているカーラチャクラ法要に対する警戒感からネット等を遮断しているということを伝えたが、実際にそこにいた日本人は次のように話す。
カンゼですがネットと国際電話が遮断され、携帯電話も一部不通になっています。ついでに外国人は公安の渉外担当に見つかると、ホテル確認されて次の日に出て行くように言われ、もっと居させてと交渉するとビザ取り上げることになると言われます。私はずっと台灣人の友達と居たのですがずっと平気でした。しかし先日来た日本人のおじいさんで引っかかってしまい結局出ることになりました。玉樹やセルシュの方には行くなとも言われました。今日バスで離れましたが途中軍事演習が各地で行われており、とくにターゴンの軍事演習場にはかなりの数の軍隊兵隊が見かけられました。タウの町は前回行った時よりかなり強化されていました。町の入口出口には公安でも武警でもなく軍隊が銃を構えていました。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)