チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年6月24日
アムドで僧院弾圧続く 愛国再教育 監視・管理強化
6月19日付けRFA等によれば、アムド、ツォゴン地区バイェン県(青海省海東地区化隆回族自治県)にあるチャキュン(བྱ་ཁྱུང་དགོན་པ་、夏琼寺)僧院を中心に地域にある20以上の僧院で、最近、愛国再教育が続き、当局により強制的に僧院の責任者が僧侶から共産党の役人にされつつあるという。
「チャキュン僧院、ディツェ僧院、タシゼ僧院等、地域にある20以上のすべての僧院に政府の教育班が押し掛け、僧侶に対するいじめや嫌がらせが増している」「共産党を賞賛し、ダライ・ラマを非難することを強要している」と現地の人は伝える。
また、「僧院には監視カメラが設置され、すべての僧侶が昼夜監視されている。僧侶たちは1人づつ呼び出され、すべての指の指紋を取られ、身体的特徴を調べられ、写真を撮られる。家族の状況もすべて調べられる」という。
さらに、「僧院の責任者は伝統的に僧侶の中から選ばれるが、最近チャキュン僧院の責任者が共産党の役人に替えられた。これは危惧すべきことだ」といい、「僧院の会計、行事その他すべてその責任者の承認を得なければならなくなり、非常に困難な状況になっている」と続ける。このように僧院の責任者が共産党の役人にされるということがこの地区に広がっているという。
「政府は僧院の改築や増築をすべて自分たちが援助したものだと宣伝している。本当はすべて地元のチベット人が布施したものだ。政府はこのように外に対し嘘をつき、自分たちはこのように弾圧されている」という。
このチャキュン僧院では、去年2月24日にパクモ・ドゥンドゥップという20歳の若者が焼身抗議を行い、死亡している。チャキュン僧院は2008年以降様々ないじめを受け続けている。(詳しくはこことここへ)
チャキュン僧院は1349年に創建された古刹であり、アムド地方でもっとも古い僧院の1つである。また、ゲルク派の創始者ジェ・ツォンカパ(1357~1419)が出家した僧院として有名である。ダライ・ラマ法王の生地にも近い。
甘粛省甘南チベット族自治州内の133の僧院内に警察署新設
甘粛省当局は先週、僧院監視強化の政策に従い、州内133の僧院内に新たに警察署を設けると発表した。多くの焼身抗議が発生したサンチュ県内の僧院には既に24カ所の警察署を配置し終わったとも発表した。
ワシントンベースのICT(International Campaign for Tibet)は6月20日付けリリースで、「この一連の警察署の新設は、2008年に中国政府が決定した『すべての僧院を政府の直接管理下に置き、チベット地区の市街地、農牧畜地帯双方において共産党の存在感を強化する』という政策に従ったものである」とコメントし、「このような監視強化は更なる緊張を高めるばかりである」と非難する。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)