チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年6月16日
投身抗議のあったゾガンで新たに60人拘束
チベット自治区チャムド地区ゾガン県では、今年初め頃より、鉱山開発を巡りこれに反対する地元チベット人と当局の対立が激化している。
5月7日にはパクパ・ギェルツェンと呼ばれるチベット人がこの鉱山開発に抗議するためにビルの屋上で自身を刀で傷つけた後、投身、死亡している。もっとも、彼は飛び込む前に「チベットに自由を!独立を!ダライ・ラマ法王帰還を!」と叫んだと伝えられる。
この事からも、チベットではこのような事件は単なる鉱山開発反対ではなく、もっと根本的な政治問題を含んだものであることを示しているといえる。
彼のこの投身を受け、その後、地元のチベット人たち数百人が政府庁舎前に2週間ほどの間座り込み、鉱山開発の中止を訴えた。
そして、今回、この騒ぎが少し静まったころを見計らい、当局は改めて鉱山開発に反対したり、デモに参加したチベット人を中心に制裁を始めたようだ。
「6月8日か9日、ゾガン県の役人がトンバルの町に現れ、ゲワ村の男子と2人の長老を招集した」「インドに行った事があるものも集まるよう命令された」とRFAに現地と連絡を取ったチベット人が伝える。
「そうして集めた後、役人はそれぞれの家の家長と2人の長老、そしてインドに行った事があるものはこれからゾガンに行かねばならない」と命令したという。
彼らはその後、ゾガン県の県拘置所に収監され続け、毎日尋問を受けていると伝えられる。住民たちの内男性は依然より鉱山開発を中止させるために、現場に3人組の見張りを立てたりしていた。当局はパクパ・ギェルツェンの投身事件を含め、反対運動やデモに関わったチベット人を洗い出し、処罰しようとしていると思われる。
当局はまた、現地で厳しい情報センサーを行い、WeChatをはじめすべての交信がチェックされていると現地の人々は訴える。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)