チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年6月12日
ゴロで銅鉱山が排水を黄河上流に流し続け 家畜が多量に死ぬ等の毒害
北京在住のチベット人作家ウーセルさん等が証拠写真と共に伝えるところによれば、青海省ゴロ州ペマ県の聖山の麓にある銅鉱山から出る鉱毒を含んだ排水が多量に黄河の上流に直接たれ流されているという。
既にこの鉱毒により、下流域の家畜が死ぬ等の被害が続き、住民はかつてのように川の水を生活用水として使う事ができず、井戸を掘るしかなくなっている。地域の住民たちはこれまでに何度も政府にこの環境破壊と毒害について訴えたが、まったく取り合ってもらえない。そこで、住民たちは最近インターネット上にこの鉱山の公害に関する写真を上げ、街中にビラを張る等して直接世界にこの「黄河に銅毒を流している」という事実を公表したという。
この鉱山は正式には2004年から青海省ゴロ・ウェストラック銅業と言われる私有会社により開発が始められた、2013年9月には品質、環境、職場の安全性という「三標一体」と呼ばれる基準をクリヤーしたと宣伝している。中国国内の銅需要の高まりにあわせ、この鉱山は急速に巨大化していると言われる。
この鉱山に関し、この地区出身で現在台湾に在住しているラゲ・ロワン氏は次のように語る。「実際にはこの鉱山は私が小さい頃、80年代から始まっていた。鉱山の規模は次第に大きくなって、今では小さな街もできました。注目すべきは、この(銅を主に産する)鉱山はその毒を含んだ排水を直接、『古曲』(黄河上流の主要な支流の一つ)に流している事です。これにより、多量の家畜が死亡しました。現地の人たちは川の水を飲むことができなくなりました。何度も鉱山会社と関連当局に請願書を出したがまったく無視されたままです」と。
現地の人たちは写真と共にネット上に次のようなメッセージを発表している。「青海省ゴロク州のウェストラック銅業がこれらの毒物汚染水を排出して、高原に残された最後の浄土を破壊しようというのですか? 尊敬する官僚の方々、あなた方はもう十分にその腹を満たしているのではないのですか? 政府の名をつかって一般市民を脅し、一般市民の生きる場所を奪おうというのですか? おびただしい毒汚染水が黄河に排出されようとしています。母なる大河を保護するのは、政府の責任ではないのですか? どうか友人方、これを転送して、鉱山開発企業の悪辣な行為を広く知らせてください。(うらるんたさん訳)」と。
同じくこの地区出身で在アメリカのチベット人は「この企業は私営だ。現地の住民たちはこれまでに何度もこの開発を阻止しようとしたが、すべて失敗した。この会社は地方当局や省、さらに中央政府までも買収してやりたい放題だ」という。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)