チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年5月25日
パクパ・ギェルツェンの投身抗議の後
抗議デモ
先のブログで、5月7日、自治区チャムド地区ゾガン県のビルの屋上から、パクパ・ギェルツェンという妻子あるチベット人が地区の鉱山開発に反対し、投身自殺を行い死亡したということをお知らせした。
その後、地区では彼のこのような死をかけた抗議行動に心動かされ、数百人のチベット人がトンバル郷の庁舎の前に集まり座り込みの抗議を始めたという。5月20日RFA英語版によれば、20日の時点でも座り込みは続いており、「ここままでは緊張が高まるばかりだ」、「また人が死ぬことになるかもしれない」と地元のチベット人は危惧しているという。
実際、抗議デモ中に1人の若者が刀で自殺しようとしたが、周りの人がすぐに抑え、大事には至らなかったという。
抗議のため、彼の出身村であるゲワ村から駆けつけた60人の女性たちなどは「(鉱山開発に関する)自分たちの要求が聞き入れられなければ喜んで死ぬ用意がある」と宣言しているという。
弔問者が自殺を計る
パクパ・ギェルツェンの遺体が家族の下に届けられた後、家族の下には連帯を示すために大勢のチベット人が訪れた。そんな最中、リクジンと呼ばれる若者がパクパの家族の家の屋上に登り、刀を取り出し自殺しようとした。最初に刺した後、すぐに彼の兄がこれに気付き、制止したという。
彼は病院に運び込まれたが、命には別状はないと報告されている。最初の頃は彼を見舞うことは自由であったが、20日現在、病院への訪問は禁止されているという。
叔父拘束
パクパ・ギェルツェンが投身抗議を行った5日後の5月12日、彼の叔父さんであるジャンパ・チュペルがチャムド警察により拘束された。理由は明らかにされていない。
ジャンパ・チュペルはチャムドに住み、亡くなったパクパの子供やその他親元から離れ街の学校に通う子供たちの面倒を見ていたという。彼が拘束され、残された子供たちの面倒を誰が見ているのかは不明とのこと。
当局は地区を厳重な警戒下に置き、ネットや携帯を遮断し、検問を強化している。パクパの家族や親戚に対しては特に、「外国に情報を流せば、大変な結果を味わうことになるぞ!」と脅しているという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)