チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2014年5月9日

ビルの屋上で「チベットに自由を」と叫び 刀で自分を刺した後 投身・即死

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image投身抗議を行ったパクパ・ギェルツェン。

5月7日の早朝、チベット自治区チャムド地区ゾガン県で、パクパ・ギェルツェン(འཕགས་པ་རྒྱལ་མཚན།39)と呼ばれる1人の妻子あるチベット人が、ビルの屋上で「チベットに自由を!独立を!ダライ・ラマ法王帰還を!」と叫び、刀で2度自身を傷つけた後、身を投げ、その場で死亡した。

RFA等によれば、この事件の直接的原因は地元で始められようとしている鉱山開発であるという。ゾガン県トンバル郷(མཛོ་སྒང་སྟོང་འབར།)では2ヶ月ほど前より、郷内で橋や道を整備する等して鉱山開発の準備が進められていた。当局はこれらをダムを造る準備だと説明したが、地元のチベット人たちは、これが鉱山開発の準備であると知っていた。

地元のチベット人たちはこの鉱山開発を阻止することを決め、現場に交代で3人づつ見張りを立てるということも始めた。4月28日には、若者を中心に20人ほどが抗議デモを準備していたとして連行された。しかし、彼らはその後、長老たちの働きにより解放された。

当局は開発現場近くのチベット人家庭それぞれに1万元の補償金を与えようと持ちかけたが、すべての家族がこれを断ったという。

5月6日の夕方、パクパ・ギェルツェンを含む数人が地元の役所に呼び出された。役所からの帰り道でパクパは他の仲間たちに向かって「トンバル郷のものたちは、これ以上鉱山開発に反対して問題を起こし困難な状態に陥る必要はない。俺が1人でなんとかする」と言ったという。

次の日の早朝、パクパ・ギェルツェンはトンバル郷の高い建物の屋上に上がり、「チベットに自由を!独立を!ダライ・ラマ法王帰還を!」と叫んだという。役人がすぐに駆けつけ、彼を制止しようと近づくと、彼は刀を抜き、自分の体を2度刺した後、身を投げ、その場で死亡したという。

パクパ・ギェルツェンはゾガン県トンバル郷チュシュ家の長男。3人の幼い子供と妊娠中の妻を残した。

参照:5月7日付けRFA英語版
同チベット語版
5月8日付けTibet Timesチベット語版
5月8日付けphayul
5月8日付けFree Tibet リリース

チベットではこのところ抗議の焼身が一般的であるが、これまでに抗議の投身の例もいくつかある。

2008年10月18日、アムド、ツェンツァで中学生ユン・ルンドゥップが学校の3階から「他のチベット人を鼓舞するため」に飛び降りた。彼は詩集を残している。

2012年4月2日にはドゥンドゥップ・プンツォ(26)が、インド、コルカタにあるハウワー橋からガンジス川に投身した。明らかに中国に対する抗議の投身と思われ。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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