チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月29日
ジェクンドでチベット人経営のレンガ工場数棟が当局により取り壊される
4年前の2010年4月14日に大地震に見舞われ、数千人~1万人の犠牲者が出たジェクンド(ユシュ、ケグド、玉樹)では、住民の意思・利害を全く無視した、救援金を使った新観光都市計画が急ピッチで進められている。レンガの需要が急に増え、付近にはチベット人や移民してきた漢人が経営するレンガ工場が沢山できたという。
そんな中、4月20日、突然チベット人経営のレンガ工場にブルドーザーと警官が現れ、高炉はもちろんのことテントを燃やされ、携帯を没収され、事務所も完全に壊したという。この日このような目にあったチベット人レンガ工場の数は5、6カ所に上ったという。壊されたのはチベット人経営の工場ばかりであり、漢人経営の工場は全く壊されなかったという。壊される時、これに抵抗したチベット人は暴力を受け、負傷したという。
この事件について現地からニマというチベット人がRFAに報告している。彼は「漢人レンガ工場オーナーたちはチベット人同業者との競争を無くすために、5万元払って当局を買収したと信じられている」という。
3月中にも当局はジェクンドに近いカルダと呼ばれる遊牧民地帯で住民が共同で作った共同商店を取り壊した。商品等を救おうとしたものたちは殴り倒されたという。
「チベット人が計画する言語学校、商店、飲食店の許可はおりないのに、漢族移民の商売は何でもすぐに許可される」とチベット人たちはこぼす。「ここでは当局による明らかな差別が存在する。漢族移民は優遇され、チベット人は冷遇される」とニマはいう。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)