チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年2月17日
13日ンガバで焼身のロプサン・ドルジェの死亡が確認された
ロプサン・ドルジェ焼身中のビデオが亡命側に伝わった。左の写真はそのキャプチャー。
15秒ほどのこの短いビデオには座り込んだ姿勢で激しく燃え上がるロプサン・ドルジェが中央、交差点の向こうの道の真ん中に見える。回りからチベット人の雄叫びが聞こえる。
手前を僧衣を着た、まだ幼い感じの僧侶が「お父さん、焼身だよ。離れなきゃ危ないよ」と言ってるかの如くに、父親と思われる大人の袖を引っぱりながら焼身現場から遠ざかろうとする。
計4人の武警と警官が消火器を持って次々現れ、火を消す。回りの人々はもっと焼身者に近づいて守りたいと思いながらも、当局への怖れによりそれ以上近づけないというように見える。
録音されている男性の声は私には「ギャワ・テンジン・ギャンツォ・ケン」と繰り返されているように聞こえる。もしもそうならば「ダライ・ラマ法王よ思し召しあれ」という祈りの言葉である。もっとも、訛りもあり私にははっきりとは聞き取れないのではある。
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ダラムサラ・キルティ僧院の内地連絡係僧ロプサン・イシェと僧カニャク・ツェリンがそのリリースで明らかにしたところによれば、2月13日にンガバの街中で焼身抗議を行ったロプサン・ドルジェが16日中にマルカムの病院で死亡した。
家族の強い要望にも関わらず、遺体は家族に手渡されることなく、当局が火葬し、これが遺灰だというものが家族に渡されたという。
当局の厳しい規制にも関わらす家族はロプサン・ドルジェの追悼会を行い、ンガバのチベット人たちは彼と残された家族への連帯を示すために、3日間商店・飲食店を閉め、僧院等にお参りに行く人が多く、家族の下に香典を持って参じる人もいるという。
正月開けのモンラムが続くンガバ・キルティ僧院では、参拝するチベット人の中に私服警官が大勢混じり、スパイ行為を行い、街頭には大勢の部隊が示威行為を繰り返すという、硬軟会わせた警戒が続いているという。
内地焼身者127人の内、彼を含め110人の死亡が確認されたことになる。
外地焼身者5人、内死亡3人と合わせ、2009年以降のチベット人焼身者の数は132人、内死亡113人となった。
参照:2月16日付けRFAチベット語版
2月16日付けTibet Timesチベット語版
チベットの焼身についてより詳しい背景や分析、焼身者リスト等に興味がある方は自著「太陽を取り戻すために/チベットの焼身抗議」を参照お願いします。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)