チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年1月21日
ナンチェンで環境保護活動等を行っていた2人拘束
1月10日付けTibet Timesによれば、最近ジェクンド(ケグド、ユシュ、玉樹)州ナンチェン出身のチベット人2人が拘束された。
去年9月18日、ナンチェン出身のツェテン・ドゥンドゥップが青海省の州都西寧で突然警官に拘束され、行方不明となった。その後、家族や友人が彼の居所を捜し続け、今年1月5日にようやく彼が西寧の刑務所に収監されているということが判明した。しかし、今のところ家族との面会は一切許可されていないという。
35歳のツェテン・ドゥンドゥップは以前インドに亡命し、ダラムサラから2時間ほど離れたチョントラにあるゾンサル僧院で勉強していたことがある。その後、故郷に帰った彼は、学校が休みとなる夏と冬に農牧民の子供たちにボランティアでチベット語の読み書きや仏教を教えていた。その他、彼は病人を助け、地域の争い事を仲裁し、環境保護や保健衛生向上のためにも尽力していた。このように、彼は知識と行動力のある若者として地域の人々から尊敬される存在であったという。
また、彼と共に環境保護を訴えていた同じくナンチェン出身のズムガが去年12月25日前後に警察により拘束され、その後行方不明となっている。ズンガはツェテン・ドゥンドゥップと共にジェクンド州やその他の地域で行われている鉱山開発に抗議したり、チベット人の団結を訴える活動を盛んに行っていた。
報告者が語るところによれば、「ジェクンド州は元々様々な点で豊かな土地であり、大地震の後、観光都市に生まれ変えさせようとしている今、中国政府は環境保護等を積極的に訴えているにも関わらす、ザトゥ県等では地元の人々が聖山と崇める山に金、銀、錫等の鉱物が多量に発見されたということで、鉱山開発を進め、中国内地に運び去っている。この鉱山開発に対し、地元の人々が抗議を行えば、それはすべて政治的行動と見なされ、暴力的弾圧や逮捕が行われ、強引な開発が続けられている」という。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)