チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年12月31日

「いつ、どこで死ぬべきでしょうか?」とモンゴル随一の高僧ジェツン・ダンパ9世はダライ・ラマ14世に尋ねた

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3334ダライ・ラマ法王、南インドセラ僧院にて(写真dalailama.comより)。

12月29日、ダライ・ラマ法王は南インドのセラ僧院で3万人参加のラムリン・ティーチングに入られる前に、去年モンゴルで遷化したモンゴル随一の高僧ジェツン・ダンパ9世*の転生者が早く見つかりますようにと祈る詩偈を読み上げられた。その際、法王はジェツン・ダンパの最期と、彼の思い出を語られた。

この2人の超高僧のやり取りは、再生を前提とするチベット仏教圏に特異な対話として非常に興味深いものがあると思い、この時の法王の話しの一部を紹介することにした。(チベット語の生録音がここで聞ける。2:52~6:02まで)

ジェツン・ダンパと私は子供のころから知り合いだった。10歳頃からよく知っている。それからインドに亡命し、やがて彼の先代に代々仕えて来た弟子たちが沢山いる故郷に帰ることができた。以前、私が(モンゴルに行って)会った時、彼は非常に衰弱していた。そこで、私は「リンポチェ(ジェツン・ダンパ)の転生者を捜すことについて考えなければならない。転生の場所はモンゴル内が最適であろう」という考えを伝えた。それはチベット暦の終わりの頃だった。非常に衰弱していた。

それから彼は「いつ、どこで死ぬべきか?」と尋ねて来た。私にこんなことを尋ねた人は他にいない。そこで私は「モンゴルで遷化するのが良かろう。遷化する日時についてだが、今は年末だから、ロサ(チベット暦の正月)が開けたころが良かろう」と答えた。そして、私が言ったその通りに遷化された。私からの返事が届いた後、少し元気になったようだった。

リンポチェが遷化されたという報告を受けた後、遺体にカタを捧げるためにサムドゥン・リンポチェを送ることを決めた。「トゥクダム(一般的死の後、完全な死を前に<原初(不生、本然、光明)の心>に留まっている状態とチベット仏教で信じられている状態)に入られていたが、鼻から血がでるという印が現れたので葬儀を行うべきか?」と言って来た。私はサムドゥン・リンポチェが到着するまで待つようにと言った。そして、サムドゥン・リンポチェが到着し、カタを捧げた後、トゥクダムを終え、完全に意識が解放されたのだ。本当に美しい死に方だった。

*ジェツン・ダンパについては例えば石濱先生のブログ等を参照のこと。

ということで、今年最後のブログは「死と再生」というお話でした。

今年一年、当ブログを愛読して下さった方々にお礼申し上げます。
来年もよろしく! 良いお年を! プーギェロ!

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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