チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年12月28日
灯明祭のことなど
日本は年の瀬ということで、やり残した仕事とか、忘年会とかに追われる日々も終わりかけ、里がある人は、お正月を両親の下で過ごしたりするために、故郷に帰ろうとしているという方もおられることでしょう。とにかく何かと忙しいのがこの時期の日本。と言いながら、もう10年以上、正月を日本で過ごしたことがないことに気付く私。
ダラムサラは先週、天気が荒れて街のすぐ近くまで雪が積もったが、その後は毎日快晴、温かい穏やかな日が続いている。ここはすべてがチベット暦をもとに動いているので、西暦の正月は何事もなく過ぎて行く。今日はおもいつくまま、写真と共に身辺を含めた最近の話しを。
ここで年の瀬を感じさせる行事といえば、昨日のガンデン・ンガムチュ。ゲルク派の祖師ジェ・ツォンカパの命日とされるこの日にはチベット人はそれぞれの僧院に詣で、夜には沢山の灯明やローソクを窓辺等に並べる。その沢山の灯明の明かりが美しいので俗に「灯明祭」とも呼ばれる。ここのクリスマスのようなものだ。
ガンデン・ンガムチュについては、ダラムサラの写真と共に毎年ブログに上げている。例えば去年のはここ。詳しい説明を知りたい方は過去ブログへ。今年は家のベランダからキルティ僧院を撮っただけで街には上がらなかった。
こちら、毎年恒例となっている、ラサ・ジョカン前の昨日の様子。今年も警官、武装警察、軍隊が大勢出動し厳重な警戒が敷かれていたそうだ。「至る所で携帯をチェックされ、ダライラマの写真等があればすぐ連行される」とラサからの声。
それにしても、毎年フェースブック等に、この夜のジョカン前という写真の投稿数が増えているように思う。暗いから隠し撮りしやすいのか、スマホの普及も進み、携帯で現場の写真を撮り、すぐに送る、そして消すという操作に慣れて来た人が多いのか? 興味深いところである。
これは昨夜、ガンデン・ンガムチュの日にジェクンド州ティンドゥ県にあるニャンツォ・シルカル僧院で、大きな法王の写真が掲げられたというもの。この僧院はガッツのある僧院として有名であり、これまでに多くの僧侶が政治犯として刑を受けている。
27日、ダラムサラ、ツクラカン焼身者を弔う法要。(写真phayulより)
同じく昨日、ツクラカンでは午後4時から、亡命政府主催で12月19日にアムチョクで焼身・死亡したツルティム・ギャンツォの霊を弔う法要が行われた。政府はこのところ焼身者が出た時には必ずこの種の法要を行う。
法要に参加した亡命政府首相のロプサン・センゲは「私は、彼らは単なる数ではない、チベットのために命を捧げた兄弟姉妹であると、何度も繰り返し言い続けている。だから、我々は彼らの犠牲を決して忘れず、彼らの願いを叶えるために努力すべきなのだ」と述べる。
南インドのセラ僧院で講義を始められる法王。(写真RFAより)
ダライ・ラマ法王は南インドのセラ僧院で12月25日から来年1月3日までの比較的長いティーチングを始められた。このティーチングは去年から始まった「18種ラムリン講義」の続きである。チベットの高僧たちによる「ラムリン(菩提道次第)」という悟りへの階梯を説いた解説書は沢山ある。一番有名なのがジェ・ツォンカパの「ラムリン・チェンモ」。法王は沢山あるラムリンの中から18を選びこれをすべて講じるというのだ。とにかく量が半端ないので、おそらく今回でも終わらないと思われる。講義はライブで聞くことができる。
このティーチングには南インドにある三大僧院の僧侶をはじめ、約3万人が参加しているという。外人も数千人参加し、日本人にはマリアさんが日本語通訳を行っているはずである。
12月25日に解放され歓迎のカタに埋もれるリンチェン・ツェリン。
このところ、チベット人政治犯が立て続けに、刑期満了前に解放されている。これは最近党中央が決定した刑務所改革の一環として中国内の幾つかの刑務所が閉鎖されることに伴い、受刑者が刑の満了を待たずに解放されたというケースと思われている。
25日に解放されたリンチェン・ツェリンは、アムド(甘粛省)、甘南チベット族自治州ツォネ県で2008年に抗議デモに参加し、8年の刑を受けていた。この時同じデモに参加し、チベット国旗を掲げたとされた僧テンジン・ギャンツォ(40)には15年の刑、同じく僧テンジン・ギャンツォ(28)に13年の刑、その他3人に8年の刑が言い渡されている。
その他、アムドを中心に焼身に関わったとして刑を受けた人等が早期解放されている。
ではあるが、一方でこのところ逮捕のニュースも沢山伝わっている。すでにこのブログで報告したディル等のケースだけでなく、アムドのゴロ州やジェクンド州カムのカンゼ州、チベット自治区内のチャムド等で突然警察に連行され行方不明となったという報告が様々入っている。
特徴的な両翼上の赤い斑点、大型、頭がグレーでもサクランボ色でもないということで、ALEXANDRINE or LARGE INDIAN PARAKEET psittacula eupatria 58cm と思われる。
ただ、この種類は一般的に南インドを中心に生息するらしいので、この辺で見かけるのは珍しいということになる。100匹ほどの集団が家の回りを何度も旋回していた。
日本からは年末恒例の「年末に光をプレゼント ダラムサラ・アイキャンプ」の眼科医さんたちが到着し、今日から手術を始められている。
その他、このダラムサラに30年以上住み続け、ひたすらタンカを描き、4年ほど前に日本に帰っていた馬場先画伯が昨日からダラムサラに現れておる。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)