チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年12月27日
高僧の解放を求めた16人拘束
「教師を失った弟子たちの苦しみを知ってほしい」と書かれた横断幕を掲げ行進する僧侶たち。
情報元を在北京のチベット人作家ウーセルとし、26日付けRFAが伝えるところによれば、12月21日、青海省ジェクンド(玉樹)州ナンチェン県で、先に拘束されたいた地域の指導的僧侶であるケンポ・カルツェの解放を求め行進を行ったチベット人の内16人が拘束されたという。
12月14日付け当ブログで、ケンポ・カルツェともう1人の高僧が拘束されたということはお知らせしていたが、その時点では「住民の抗議により2人とも解放された」という情報であった。だが、次の日には「いや、ケンポ・カルツェはまだ解放されていない」という情報が入っていた。
ケンポ・カルツェ(又はケンポ・カルマ・ツェワンཀརྨ་ཚེ་དབང་།)はナンチェンの出身であるが、勉学のために自治区チャムド地区カルマ郷にあるカルマ・カギュ派の祖寺カルマ僧院で長年学んだことがあった。このカルマ僧院は2008年10月27日に起った当局言うところの庁舎爆発事件に関係したとして、その後厳しい弾圧の対象となっている。2011年12月2日にはこれを苦にした元カルマ僧院僧侶テンジン・プンツォクが焼身、死亡するという事件も起っている。
情報によれば、ケンポ・カルツェは12月6日に四川省の州都である成都でチベット自治区チャムド地区の警察により拘束され、その後チャムドへ連行されたという。彼がカルマ郷での事件に関係していたと疑われている可能性は高いであろう。
ケンポ・カルツェは地域で人気の高い指導的ラマ(高僧)であった。彼が逮捕されたという情報が伝わり、彼の直接の弟子であるジャパ(カルツェ)僧院の僧侶を中心に、4千以上の署名と共に政府にケンポの解放を求め、18日には数百人によるデモ行進も行った。
その時、役人は「話しは分かった。ケンポ・カルツェは解放されるであろうから、もうみんな家に帰れ」と答えたという。しかし、ケンポは解放されず、デモの3日後にはデモに参加した者の内16人が拘束された。16人は現在ジェクンドの拘置所に入れられている。
地域で人気の高いケンポがこのまま拘束され続ければ、火種となり、このままでは終わらないような気がする。カルマ・カギュ派全体を再び刺激する可能性も高い。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)