チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年10月30日
過去3度に渡り14年間獄中で過ごした元政治犯 再び連行され行方不明に
10月25日付けTibet Timesによれば、デモに参加したとしてこれまでにすでに3度刑を受け、計14年間獄中で過ごしているラサ、チュシュル出身の元政治犯トゥプテン・ソナムが2ヶ月ほど前に秘密裏に当局により連行された。家族、友人は彼が何故連行されたのか、今どこにいるのか知ることができないままという。
トゥプテン・ソナムは1989年1月28日にパンチェン・ラマ10世が不審な死を遂げた直後、中国当局が殺したのだと、抗議の声を上げた。これにより彼は9年の刑を受けた。刑期を終え解放された後、ラサにおける抗議デモに参加したとして再び2年の刑。さらに2009年、ラサのパルコルで行われたデモに参加したとして2年の刑を受けた。刑務所における暴力により彼は病床に付したが、チャムド出身のテンジン・チュペルという囚人が彼の病気は仮病であると看守に訴えたことにより、1年刑期が延ばされた。
彼はチュシュル刑務所に収監されている間、刑務所側に対し、政治犯に食事や飲み水を与えず、飢餓状態にし、その上様々な暴力を与えていると訴えていた。また、刑務所仲間に対しては「ダライ・ラマ法王がチベットにお帰りになるまで、自分は刑務所に居続けるつもりだ」と言っていたという。
2012年に解放された彼は、最近ある写真の上にチベットの自由を願い、ダライ・ラマ法王を讃える歌を記していたという。
山頂にルンタを撒きながら
心に願う
雪山チベットの民に
解放の時が訪れますようにお体は不変の金剛石の如く不動
お声は不変のブラフマンの調べの如く心地よく
お心は清らかな鏡のように真実を映す
このような根本のラマを心に偲ぶ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)