チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年7月28日

法王が「チベットは間もなく解放されよう」とお告げ!?

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603045_450130761751656_664152546_nダライ・ラマ法王は南インド訪問を終えられ、7月29日、デリーより飛行機でラダックのレーに入られる。今回法王がラダックに行かれるのは、そこで「ツァム(お篭もり)」をされるためという。おそらく8月1日から21日間であろうと言われている。法王が冬にダラムサラでツァムを行われるというのは毎年のようによくあることだが、夏にラダックで行われるというのは初めての事と思われる。

さて、フェースブック等では今回の法王のツァムにまつわる色んな噂が飛び交っている。曰く「法王は南インドに滞在中に『お告げ』をされた。『チベットは間もなく自由になるであろう』とおっしゃった。ただし、これを助けるために、今回法王がラダックでツァムに入られている間、信者たちは毎日『オンマニペメフン(観音菩薩の真言)』を1000回、『般若心経』を2回、『観音賛(འཕགས་བསྟོད།観音菩薩を賛嘆するお経)』を1回唱えなければならない。それと同時に毎日菩提心と空の智慧について瞑想せよとおっしゃった」というのだ。

これを読んで、私は「法王がお告げ!」とな?前代未聞だと思った。法王はいつも「私には明日のことは分からない。でも明日のことを心配しないですむような教えは知っている」と言われる。法王は自ら予言者ではないことを明言されているのだ。本当だろうか?と疑いながら、話しの出所を探していたが、Tibet Expressがこれに関連する記事を昨日出した。

それによると、法王は南インド、モンゴット・チベット人居留地を訪問中7月25日に一般チベット人や特にここにあるデブン僧院とガンデン僧院の主な高僧たちと面会された。その時、法王は傍に高僧シャルワ・チュゼ・ロプサン・テンジン(ཤར་བ་ཆོས་རྗེ་བློ་བཟང་བསྟན་འཛིན།)を呼び出され、彼に以下のような話しをされたという。

「去年ラダックのシウェーチャル宮殿(ཞི་བའི་ཚར་ཕོ་བྲང།)に泊まっていた時、吉祥の印が現れた。今年もそこに留まり、1ヶ月ほどツァムを行おうと思う。あなた方もその間、毎日『観音の真言(マニ)』を1000回、『般若心経』を2回、『観音賛』を1回、途切れることなく必ず唱えてほしい。これは非常に大事なことである。チベット問題が早期に解決される(བོད་ཀྱི་བདེན་མཐའ་མྱུར་དུ་གསལ་བ་)ことと深い関係がある」と。

これを受け、デブン僧院とガンデン僧院では8月1日から1ヶ月間、これらのお経を唱えることはもちろん、その他の特別な修行も行われるという。

記事には法王が一般の信者に対してもこの3つのお経を唱えることを勧めたかどうかは書かれていない。ただ、これを聞いたチベット人たちの多くが、8月中にこれらを熱心に唱えるであろうことは間違いないように思う。

法王が去年ラダックでご覧になったという『吉祥の印』については、これまたFBに「時ならぬ白い渡り鳥がチベットへ向かうのをご覧になった」という話しが書かれていたりするが、本当のところは明らかでない。

『チベット問題の早期解決』と訳した元のチベット語を直訳すると「チベットの真実が早期に実現する」となる。これは「チベットの自由実現(高度自治の実現)」とも取れるし、「対話再開」とも取れるし、「法王のチベット帰還」とも解釈できるであろう。「独立」でないことは確かである。

法王が何かの吉祥なる印から、直感的な解釈を引き出されて、今回このようなことを語られたのか?それとも何か新しい情報が入ったのでそうおっしゃるのか?は定かではない。

何れにせよ、法王の今回のラダックにおけるツァムには政治的な祈りも込められているであろうことは想像できる。

「お告げ」を信じるかどうかに関わらず、正しい意味を知って、慈悲と智慧を育てるためにマニ等を唱えることは良い事なので、心ある人は、8月中に「オンマニペメフン」だけでも毎日唱えてみては如何でしょう。

「祈りだけでは状況は変わらない」も法王の口癖。「祈りは正しい行動へ心を準備すること」と言われる。

参照:7月27日付けTibet Express チベット語版 http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-35-27/10905-2013-07-27-16-21-41

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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