チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年5月27日
ンガバ出身の歌手、プロデューサーであるペマ・リクジン 連行・行方不明
5月7日、四川省成都でアムド、ンガバ出身の歌手ペマ・リクジン(པདྨ་རིག་འཛིན།)が突然警察により連行され、その後行方不明となった。また、彼が成都で運営してた映像ワークショップも当局により閉鎖された。
ペマ・リクジンは1982年からチベットのフォーク歌手としてデビュー、「雪国を思い出す歌 གངས་ལྗོངས་དྲན་གླུ།」や「涙 མིག་ཆུ།)」等チベット人の心情を歌った多くのヒット曲を生み、人気を博した。2008年以降、歌手としての活動を止め、成都に映像ワークショップを作り、そこでチベット人の現状、心情を歌う多くの歌手を育て、曲をプロヂュースして来た。中国当局はこれまでに何度もこのワークショップを閉鎖するよう命令していたという。
ダラムサラ・キルティ僧院の内地連絡係り僧カニャク・ツェリンによれば、ペマ・リクジンはンガバ県メルマ郷第4地区の出身。現在41歳前後。彼は幼少時にンガバのナムツォ僧院で僧侶となり、セルタのラルン・ガル僧院でも学んだことがあるという。その後還俗し、結婚。2人の子供がいるという。
ペマ・リクジンの歌「カンゾン(雪国=チベット)を思い出す歌」
歌詞の日本語試訳:
作詞:ティメ・ワンギェル
作曲・歌:ペマ・リクジン
雪が降り積もり
周囲の山々を白く飾り
汚れなき仏法の広まる地
雪の国チベットを思い出した
ラマたちの慈悲に溢れる住まい
菩薩の転生者たちが歌舞する地
至上のラマ(ダライ・ラマ)の住まい
雪の国チベットを思い出した
四つ大河が流れ出し
六つの気高い雪山が聳える
カム、アムドを含む浄土
雪の国チベットを思い出した
雪の国を再々思い出した
仏法の浄土を思い出した
雪山の子供である私は
思い出を歌にのせる
雪山の子供である私は
思い出を歌にのせる
参照:5月23日付けTibet Times チベット語版 http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7702
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)