チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年4月24日
チベット人たちは地震被災者への愛を示す
4月20日に発生した四川省雅安地震の現在のところ犠牲者約200人、負傷者約1万数千人と深刻な被害となっている。中国政府は地震の規模をM7.0と発表しアメリカ発表のM6.6と大きくかけ離れている。被災地の映像を見ると、地震が大きかったというより、とにかく脆弱な建物が多かったように思えた。
現地では支援物資到着の遅れに抗議し、水よこせ、食べ物をよこせ、テントよこせデモも各地で起っているという。写真左は宝興県で23日に行われたその手のデモ。「寒いぞ、腹減った」等と書かれている。
また、同じく住民たちが「『M8.0耐久』だと言われて大枚はたいて購入した家やマンションが今回の地震で損傷し使い物にならなくなった」と開発業者に金を帰せと要求するデモが起った。目撃者によれば2千人が集まり、これを阻止しようとする部隊との間に衝突も起ったという情報もある。
そんな中、チベット人たちは僧侶を中心に地震発生後直ちに支援物資を満載したトラックを用意し、集めた義援金とともに現地に向かった。中国では災害発生時には軍隊と警察が出動するが、チベットでは誰に命令されなくても、僧侶たちが出動するのである。2010年のジェクンド大地震の時も周辺の僧院から僧侶が大勢駆けつけ、直ちに救助活動を行った。後から来た部隊はしかし、手柄を僧侶たちに持って行かれては大変だと、僧侶たちを強制的に追い出し、高山病でまともに動けない部隊をTVに映しまくった。
今回、どこの僧院が動いたかははっきりしていないが、カンゼ州のゾクチェン僧院とラガン地区の僧院が物資をトラックで運び現地に入り、物資を配ったり、炊き出しなどを行ったことは確認されている。その他、RFA によれば、ンガバ州バルカム県の昌列寺(中国語ソースしかなくチベット名不明)も物資を運び込むことに成功したという。
また、ジェクンド(玉樹)からも物資を積んだトラックと僧侶が現地に向かったが、こちらは途中で軍隊と警察に追い返され、現地に入ることができなかったという。当局はその時「個人の救援物資は受け付けない」と言ったという。また、同じく被災地に救援物資を届けようとしたチベット人僧侶は途中で止められ、「誰が派遣したのか?誰が許可したのか?政府が許可しない救援物資を被災地に運ぶことは許せない」と警官に言われ、「仕方なく、引き返した」という。
今回も当局はチベットの僧侶が救援活動を行うことを歓迎していないことは確かなようである。
また、各地の僧院では被災者への連帯を示す祈祷会が行われた。同時に各地の僧院、学校、村々で募金活動も行われているという。
参照:23日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/china/among-04232013152835.html
同中国語版http://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/shaoshuminzu/dz-04232013150255.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)