チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月23日
ボドゥナートで焼身した僧ドゥプツェの遺体引き渡し期間が過ぎ…
チベット独立100周年記念日に当たる2月13日に、カトマンドゥ、ボドゥナート仏塔傍で焼身し、その後病院で死亡した、僧ドゥプツェ(ドゥプチェン・ツェリンhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51780647.html)の遺体は、度重なる亡命政府やチベット各団体の引き渡し要求にも関わらず、依然ネパール当局が保管し続けている。
ネパール当局は親族や正式な政府機関代理人が引き取りに来る期間を35日間と指定し、それが過ぎれば遺体は当局が火葬すると言明していた。その35日は先の3月20日であったが、情報によれば遺体は今も火葬に付されず、病院に保管されているという。
ネパール当局が出した「親族か正式な政府機関代理人が引き取りに来ること」という条件は、最初から無理難題の条件である。彼の親族はチベットにいて、中国政府がパスポートを発行することは考えられず引き取りに来ることはできない。また、チベット亡命政府は引き渡しを要求しているが、ネパールは亡命政府を正式な政府機関と認めないので、引き渡してもらえない。亡命政府は今、アメリカ等の第三国に代理受理を求めているという情報もあるが、これが認められるかどうかも不明である。
ネパール政府がこのような理不尽な対応を行っているには、中国政府の圧力に屈しているからであろうというのが大方の見方である。チベット人に取って、死者を仏教の伝統的な葬儀に従って来世に送るというのは非常に大事なことである。これは何も、チベットに限ったことではなく、世界的にも死者を送る葬儀は基本的人権の一つとして法律的に認められ、擁護されていることである。
ネパール政府は中国政府の影響の下に、この焼身抗議者の遺体引き渡しを政治化し、チベット人コミュニティーに嫌がらせを行っているとしか思えない。
参照:23日付けTibet Net http://tibet.net/2013/03/23/druptses-body-still-in-nepal-governments-custody/
SFTJによる「遺体返還を求める緊急アピール」http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51783949.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)