チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月19日
岩に彫られた法王長寿祈願文が削ぎ落される
左写真:上部に法王長寿祈願文が彫られている。右写真:削ぎ落された跡。
青海省ジェクンド(ケグド、玉樹)州ティンドゥ県ザトゥ郷ニャンツォ・カンマル村(མཚོ་སྔོན་ཞིང་ཆེན་ཁྲི་འདུ་རྫོང་རྫ་སྟོད་ཤང་ཉ་མཚོ་ཁང་དམར་སྡེ་བ་)の人々は、先の3月10日、チベット蜂起54周年を記念し、巨大な村のマニ岩の最上部にダライ・ラマ法王の長寿を祈る詩句を彫りつけた。
有名なこの詩句は以下:「གངས་རི་རྭ་བས་བསྐོར་བའི་ཞིང་ཁམས་སུ།། ཕན་དང་བདེ་བ་མ་ལུས་འབྱུང་བའི་གནས།། སྤྱན་རས་གཟིགས་དབང་བསྟན་འཛིན་རྒྱ་མཚོ་ཡིས།། ཞབས་པད་སྲིད་མཐའི་བར་དུ་བརྟན་གྱུར་ཅིག།།(雪山に囲まれしこの浄土の、全ての利益と幸福の源である 観音菩薩テンジン・ギャンツォ[ダライ・ラマ法王]よ、濁世の尽きるまで末永く留まられますように)」
で、これを見つけた当局は「これは政治的陰謀である」と判断し、直ちに軍隊を呼んで崖に彫られたこの詩句を削ぎ落させたという。
現地からの情報によれば、ティンドゥ県では3月10日が近づくと当局は各地で集会を開き、「外国に電話をかけたり、受けてはならない。もしも、そうようなことがあれば、その会話は全て当局が盗聴していると知れ。外国に情報を流した者は厳しく罰せられるであろう」と告知したという。
今回、この詩句を崖に彫ったチベット人たちも連行される恐れがあると思われているが、現地との連絡が途絶え、その後の状況はまだ伝わっていないという。
このティンドゥ県ではこれまでに4人が焼身抗議を行っており、先月25日にはザトゥ郷にあるニャンツォ・シルカル僧院に1500人のチベット人が集まり、焼身者たちへの祈りを捧げている。
参照:18日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/prayer-03182013152012.html
18日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7473
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)