チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月7日
3月10日のラサ蜂起記念日を前に焼身抗議への警戒を強める当局
ラサ蜂起54周年記念日を前に、当局はアムドの3つの地区でネットを遮断し、各地で愛国再教育を強化している。僧院、尼僧院に対しては焼身に抗議すべきと命令し、禁令のチラシ等を張り出している。
マロ(甘粛省甘南チベット族自治州)のレゴン地区、サンチュ地区、マチュ地区ではすでにネットが全面的に遮断されている。焼身が頻発しているマロのルチュ県では119カ村で愛国再教育と焼身に抗議すべきだと言うキャンペーンが大々的に始まった。その他、ジェクンド(ケグド 玉樹)でも携帯電話のモバイルデータ通信(WeChat、MMS)が遮断されているという。
レゴンのロンウォ僧院では「8項目の禁止事項」という禁令が張り出され、そこには「管理委員会の職員、ラマやトゥルク、戒律師等は現場を離れてはならない。許可なく3人以上の僧侶が一緒に外出してはならない。ドルマ広場で灯明を灯し、祈願会やその他何かを記念するような特別の法要を行ってはならない。秘密の話合いを行ってはならない。外に出て焼香などをしてはならない。特別の集会を開いたり、参加してはならない。普段の法要に見せかけて政治的に違法な集会を開いてはならない。それぞれの僧坊に用もなく他人を入れてはならない」等と書かれている。
また、3月6日、西寧で青海省の主な僧院の僧院長等30人を集め「仏教会議」と名付けられた特別会議が行われた。この会議は「仏教」と名付けられてはいるが、内容は「命を大切にしよう。社会の安定を維持しよう。焼身に反対しよう」であり、それぞれの僧院は焼身に抗議し、焼身が発生しないよう責任を持つことが要求された。
このような、中国当局の動きに対しTCHRD(チベット民主人権センター)の代表ツェリン・ツォモは「このような高僧等を全面に押し出し、彼らを自分たちの政治的目的のために利用して、焼身を止めようとする態度はまったく効果を得ることはできないであろう。根本的な問題を無視した、偏狭で愚かな行為である」と批判する。
参照:6日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/10-march-in-tibet-03062013103055.html
7日付けTibet Times チベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7418
VOT7日放送分http://www.vot.org
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)