チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月5日
アメリカ政府がウーセルさんに「国際勇気ある女性賞」を授与
アメリカ政府は3月4日付けでチベットの作家、ブロガーであるウーセルさんが2013年度の「国際勇気ある女性賞(International Women of Courage Award)」に選ばれたと発表した。授賞式は特別ゲストとしてミッシェル・オバマ女史を招き、国務長官ジョン・ケリーにより3月8日に行われる。
ウーセルさんはこれまでにも数々の国際的な賞を受賞しておられるが、中国政府は彼女がこれらの受賞式に出席するために外国に行くことを阻み、パスポートを発行していない。残念ながら、今回も彼女はこの授賞式に参加することはできないであろうと思われる。
アメリカ政府が認定するこの「国際勇気ある女性賞」は世界中で、大きな個人的危険にも関わらす、正義と正当な権利を擁護するために勇気とリーダーシップを発揮した女性たちに贈られる。2007年に創設されたこの賞を、これまでに34カ国の46人の女性が受賞している。ツェリン・ウーセルさんは今年受賞した9名の1人である。以下にアクセスすれば受賞者全員を参照することができる>http://www.state.gov/s/gwi/programs/iwoc/2013/bio/index.htm。
この中、ウーセルさんの受賞理由を述べた部分を以下に訳す:
「中国内のチベット人居住区において焼身抗議と抗議デモが増加する中、ツェリン・ウーセルは中国内のチベット市民の人権状況について公に発言するもっとも卓越した本土活動家である。ラサ生まれのツェリン・ウーセルのウェブサイト「隠されたチベット(看不見的西蔵)http://woeser.middle-way.net」は、彼女の詩、ノンフィクション、そしてツイッター等のソーシャルメディアプラットフォームと共に、中国政府の情報封鎖のために外の世界に自らの意見を伝えることのできない数百万チベット人の声を代弁し伝えている。
保安要員に常時監視され、政治的に敏感な時期には常に自宅監禁されながらも、ツェリン・ウーセルは勇敢にチベット人の状況を記録し続けている。『証人となることを引き受けるということは代弁することです』と彼女は言い、『100人を越えるチベット人が弾圧に抵抗する意志を表明するために、自らの身体に火を点けるていることが、私がなぜ諦めず、妥協しないかの理由なのです』と断言する。」
ウーセルさんにこの賞が与えられたことは、アメリカ政府が、彼女の個人的功績を評価したのみならず、チベット人たちの権利と尊厳を獲得するための闘いへの支援を表明したものでもあると思われる。
ウーセルさんのブログの多く(100編あまり)はすでに@yuntaitaiさんの翻訳等により当ブログでも読むことができる。その他、日本でも劉燕子さんたちの翻訳により単行本として「殺劫・チベットの文化大革命」(集広舎)と「チベットの秘密」(集広舎、王力雄さんとの共著)が出版されている。
今回の受賞により、ウーセルさんが励まされ、勇気付けられ、これからも中国の圧力に負けず元気にチベット自由のために増々活躍されることを心より願う。
日本政府もこのような人権賞が出せるようになってほしいものだと思う。
追記:ウーセルさんはツイッターで「受賞の栄誉は、自らを犠牲にした人たちに捧げます」
「(受賞式に)出席するどころか、(自宅の)玄関から外に出られません…」
「目下、勇気ある国際女性賞受賞式に出席するより切羽詰まっているのはスーパーに買い物に出かける必要があること…。でも、出かけるには国家安全局の監視する車に乗らなければいけない…」
などと、監視下にある現状を打ち明けておられる。
井早智代さんが早速描かれた「ウーセルさんの受賞を祝福する絵」
絵に添えられた言葉:
「チベットの作家であり活動家であるツェリン・ウーセルさん、『国際勇気ある女性賞』の受賞、おめでとうございます。
あなたの土地と人々とあなたが平和と愛と自由に満たされますように。
敬意と感謝を込めて。」
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)