チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月2日
焼身に関わったとして9人を裁判にかけ、内3人に10~15年の刑
2月28日、アムド、ケンロ、ルチュ・ゾン(མདོ་སྨད་ཀན་ལྷོ་ཁུལ་ཀླུ་ཆུ་རྫོང་ 甘粛省甘南チベット族自治州碌曲県)の裁判所でチベット人9人の裁判が開かれた。地元新聞によれば、この裁判は公開で行われたというが、裁判所に近づこうとした目撃者からの情報によれば、裁判は秘密裏に行われ、裁判所の周辺には大勢の武装警官隊と軍隊が配備され、近づく事ができなかったという。
3月1日付けの政府系甘粛日刊によれば、この日裁判に掛けられたのは、昨年11月29日にルチュ県サムツァ郷の役場前で焼身抗議を行い死亡したツェリン・ナムギェル(31歳、2児の父、参照http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51771156.html)の焼身に関わったチベット人9人の裁判という。
9人は焼身者と同じサムツァ郷ロツォ村(ཟམ་ཚ་ཞང་ལོ་ཚོ་སྡེ་བ་)の出身である、ケルサン・キャプ、ケルサン・ソナム、ツェスン・キャプ、ドルジェ・ドゥンドゥップ、ケルサン・ナムデン、ソナム・キ、ラモ・ドルジェ、ニマの俗人8人と、サムツァ・ドンスク僧院の僧侶であり作家でもあるケルサン・サムドゥップという。(参照:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51776481.html)
この内3人にはその日の内に判決が言い渡された。政府系新聞によれば、この3人は「ツェリン・ナムギェルの焼身を見て、これを助ける代わりに、彼の身体にガソリンをかけ、早く死ぬようにした」という。これにより3人には故意殺人罪が適用され、
ラモ・ドルジェ(ལྷ་མོ་རྡོ་རྗེ་)に15年の懲役刑、政治的権利剥奪3年、
ケルサン・ソナム(སྐལ་བཟང་བསོད་ནམས་)に11年の懲役刑、政治的権利剥奪2年、
ツェスン・キャプ(ཚེ་གཟུངས་སྐྱབས་)に10年の懲役刑、政治的権利剥奪1年 の刑が確定したという。
中国当局、特に甘南州は最近立て続けに、焼身に関わったとして拘束、逮捕したチベット人たちの裁判を行い、重い刑を言い渡している。これに対しニューヨークベースの国際的人権擁護団体であるHRW(Human Rights Watch)は「裁判は拘束中の告白にのみ基づいている」「このような裁判プロセスは全く信頼性に欠けるものである」「中国政府は焼身について語るもの全てを罰することにより、焼身を止められると思っているようだが、このような『煽動』ケースを捏造することは、焼身抗議の悲劇を助長させるだけである」と述べ、また、当局はチベット人拘束者に対し「日常的に拷問を行い、非人間的な扱いと共に、(偽りの)告白を強要している」とコメントする。
その原因について、HRWは「焼身は中国政府の長年に渡るチベット人居住区における弾圧政策の下で、チベット人の権利を厳しく規制しているからである」と言明する。
参照:2月28日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/court-02282013202705.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/hearing-in-kanlho-03012013152853.html?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
3月1日付けTibet Times チベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7394
2日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=33116&article=China+sentences+three+Tibetans+up+to+15+years+for+self-immolation+“crimes”
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)