チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年2月25日
<速報>ジェ・ツォンカパ大師が出家した僧院で新たな焼身 107人目
昨日2月24日、現地時間午後8時頃、アムド、ツォゴン地区バイェン県(青海省海東地区化隆回族自治県)にあるチャキュン(ジャキュン、བྱ་ཁྱུང་དགོན་པ་、夏琼寺)僧院内で1人の俗人チベット人が中国の圧政に抗議し、焼身した。
焼身者の名前はパクモ・ドゥンドゥップ(ཕག་མོ་དོན་གྲུབ་、ラモ・ドゥンドゥップと伝えるメディアもある)、20歳前後。僧侶たちが直ちに病院に運んだというが、未だ生死は不明。僧侶たちが彼のために祈祷を行っている。事件後4、5百名の部隊が僧院に押し掛け厳重な警戒を行っているという。
パクモ・ドゥンドゥップは僧院近くのバイェン県ツァプック郷サカル・ゴンワ村(བ་ཡན་རྫོང་༼དཔའ་ལུང་རྫོང་༽ཚྭ་ཕུག་ཞང་ས་དཀར་གོང་བ་སྡེ་བ་)出身。父の名はシャボ。
追記:4月15日になり、彼の死亡が確認された。
彼が焼身した、昨日2月24日はチベット歴1月14日に当たり、この日は釈迦牟尼仏陀が異教徒の挑戦を受けこれに対し神変(神通力)の数々を示したと言い伝えられる日である。チベット各地の僧院では神変大祈願祭と呼ばれる弥勒菩薩を招聘する法要が行われる。
アムドの大僧院である近くのクンブム僧院やレゴンのロンウォ僧院、サンチュのラプラン・タシキル僧院でも大規模な法要が行われ、大勢のチベット人が集まった。しかし、これに対し当局は大量の部隊を送り込み儀式を妨害し、威嚇した。(この部分参照:ウーセル・ブログhttp://woeser.middle-way.net/2013/02/blog-post_25.html等)
昨日焼身事件が発生したチャキュン僧院は1349年に創建された古刹であり、アムド地方でもっとも古い僧院の1つである。また、ゲルク派の創始者ジェ・ツォンカパ(1357~1419)が出家した僧院として有名である。ダライ・ラマ法王の生地にも近い。
RFAやVOTによれば、この僧院では昨年末から反焼身愛国再教育が強化されており、これに対し僧侶たちが反発していたという。
(この部分参照:http://www.canyu.org/n68458c12.aspx
http://www.vot.org/?p=22001)
青海省海東地区での焼身はこれが初めて。内地焼身者107人目。
参照:14日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/burning-02242013160717.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/lhamo-dhondup-self-immolated-near-jakhyung-monastery-02242013134658.html
25日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7369
24日付けVOA英語版http://www.voanews.com/content/tibetan-man-burns-himself-protesting-china-policy-in-tibet/1609906.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)