チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年2月6日

抗議デモに参加、爆発物が頭に、8ヶ月後死亡

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昨年3月15日、アムド、ツォロ、バゾン(མཚོ་ལྷོ་ཁུལ་འབའ་རྫོང་又はカワスンドགད་པ་སུམ་མདོ、青海省海南チベット族自治州同徳県)で地元のシンティ僧院(ཤིང་ཁྲི་དགོན་པ་)の僧侶約100名が、早朝、突然街の大通りに手に手にチベット国旗を持って現れ、雄叫びと共に「ダライ・ラマ法王をチベットに!チベットに自由を!言語平等!」等のスローガンを叫んだ。彼らは政府庁舎前まで行進した。これをみたチベット人たちが行進に加わり、庁舎前に達したときにはデモは1000人近くに膨れ上がっていたという。緊張が高まったが、そこでシンティ僧院の僧院長が説得に入り、一旦デモ隊は解散した。

僧侶たちのデモ

しかし、警察はその日の夜シンティ僧院を襲い、朝のデモに参加した僧侶60人を連行した。その内10人は間もなくして解放された。僧侶が拘束されたことを知ったチベット人たちは次の日庁舎の前に集まり、僧侶たちの解放を要求した。この時も1~2000人が集まっていたという。夕方、5時頃役人が現れ、「善処するから家に帰れ」と説得。集まった人々は「僧侶が解放されない場合はこれからもデモを続ける」と宣言したという。この日、バゾン民族中学校(འབའ་རྫོང་མི་རིགས་སློབ་འབྲིང་)の生徒たちも抗議デモを行っている。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51735378.html

53839b24そして、僧侶たちが解放されないまま、18日の朝には再び数百人のチベット人が、庁舎の前に集まり僧侶たちの解放を要求。役人たちは「すぐに解放してやる」と答えたが、午後になっても解放されなかった。そこで、再び大勢のチベット人が庁舎の前に集まって気勢を上げた。間もなく、大勢の武装警官隊と軍隊が現れ、催涙弾を発射し爆発物を投げ込んだあと、一斉にチベット人に襲いかかり、殴りつけた。
この時12歳の子供が死亡し、多数の負傷者がでた。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51735957.html
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51736267.html

Gyerig-Thar-in-his-traditional-Tibetan-dress今回、死亡が伝えられたのは、この時爆発物を頭に受け重傷を負ったギャリ・タル(རྒྱ་རིགས་ཐར་35)である。去年11月17日に西寧の病院で死亡していたと最近伝えられた。彼は頭部損傷が激しく、事件後死ぬまで一言も話すことができなかったという。去年の8月までは当局の監視下にあり、家族は面会が制限され、病状も正しく知らされることがなかったという。8月にもう回復の望みはないと判断されたのか、当局は突然彼を家族の下に返し、さらに賠償金を払うことも約束した。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51758728.html

130205075321YCそして、家族は再び彼を病院に入れ、できるだけのことを尽くしたが、結局長い苦しみの末に亡くなってしまった。
彼には13歳と10歳になる男の子がいた。

当局が武力鎮圧にでた3月18日のデモに参加したチベット人の内50人を拘束した。その後、解放されたものもいるが、今も拘置所に拘留されていたり、行方不明になったままのチベット人が19人いる。

拘留が判明しているシンティ僧院僧侶は:ツルティム・リンチェン、イシェ・ドルジェ、シェラップ・ペルサン、ペマ・リクジン、ジャンジュップ・ノルブ、シェンペン・ターイェー、チョクレ・ナムギェル、テンジン・ランシャル、スパ・ギェルツェン、ロプサン、ジャンジュップ・ギェルツェン、グル・ドルジェ、ジャミヤン・ギャンツォ、ゲンドゥン・チュンペーの全部で14人であり、彼らは日々愛国教育を受けさせられていると言われる。その他、今も行方不明のままとなっているチベット人が5人いる:ドルジェ・ツェペ、ドルジェ・ギェル、ドルジェ・ドゥンドゥップ、バタル・ギェル、ツェテン・ギェル。

gyarig_thar2ギャリ・タルの葬儀に参加するチベット人たち。

チベットでデモを行えば、このように大きな犠牲がでる。この一連のデモにより12歳の子供を含め2人が死亡し、負傷者もでた。そして、デモ後の拘束中にどれだけのチベット人が拷問に遭ったであろう!? この過剰なデモ弾圧が焼身という抗議形態を選ばせる要因の1つである。

参照:4日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/gyarik-thar-dead-02042013112152.html
5日付けTCHRDリリースhttp://www.tchrd.org/2013/02/painful-death-for-tibetan-man-injured-in-police-violence/#more-1134
5日付けTibet Expresshttp://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10091-2013-02-04-15-08-40
5日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32997&article=Tibetan+dies+months+after+Chinese+police+used+explosives+on+peaceful+protest

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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