チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2013年2月5日

焼身教唆で死刑の判決にキルティ・リンポチェが反論、解放を求める

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以下は記者会見の一部で、リンポチェが焼身の歴史的背景を説明されているところ。通訳を行っているのは内務大臣のギャリ・ドルマ女史。

先月終わりの1月31日にンガバで、ダライ一味の指図を受けて、焼身を煽動、教唆したとして2人のチベット人が裁かれ、1人には死刑が言い渡された。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51778595.html)また、同じ日にレゴンでは同じく焼身に関連し故意殺人罪の4人を含む6人に12年までの刑期が言い渡された。

この2つの判決を受け、全キルティ僧院のトップである、亡命中のキルティ・リンポチェは2月2日にデリーで記者会見を開き、不正な裁判を糾弾し、8人全員の釈放を訴えた。

リンポチェは裁判、判決は「不正」であり「国際法にも違反する」と述べ、「8人への判決は中国の法律に反してしているし、もちろん国際法にも反している」とし、「これらの不正な判決は、全て前もって、暗闇の中、正規の司法手続きを経ることなく決定されたものである」と続けた。

また、「中国は一度も具体的な証拠を示したことがない。そうする代わりに、焼身者の家族、親戚、友人を拘束し、証拠を『創り出す』ことばかりやっている」と批難する。

中国側の発表に対する具体的な反論も行われ、最後に彼らを救うことを助けて欲しいとメディアに訴えた。

中国当局の「焼身の原因は外国勢力の仕業である」という証拠を示すつもりで発表されたビデオ(http://www.youtube.com/watch?v=J9uKE7i3Xxg&feature=player_embedded)を見ると、ロプサン・クンチョクが実際に話ている内容とは違う中国語のナレーションが流されていた。(私は英語バージョンしか見ておらず、ンガバ方言も解せないので中国語バージョンを見られたと思われるリンポチェのこの言葉を確認することはできない)

0000000000_012彼らはダラムサラのキルティ僧院のチベット連絡班と連絡を取っていたというが、彼らは亡命側の如何なるメディアとも関係がなく、当該の焼身事件に関する写真も情報もまったく送られて来ていない。中国側は彼らと連絡を取ったのは「(ダラムサラ・キルティ僧院内の)『ドガク』と呼ばれる組織で、11人のメンバーがいる(ビデオ中9分当たりからの部分)」と言っているが、この「ドガク」と呼ばれる組織等聞いたことがないし、また、確かに内地連絡係りはいるが、11人でなく2人しかいない。

2ともロプサン・クンチョク、ロプサン・ツェリンから連絡を受けたことは一度もないと言っている。ロプサン・クンチョクにはインドに1人だけ親戚がいると言われているが、彼はメディアとはまったく関係のない人だ。

これらのことを考えても、今回、当局が証拠を捏造したことは明らかである。

裁判は公開されたというが、実際には家族の誰も傍聴を許されていない。100人ほどいたというが、すべて中国の役人ばかりに違いない。

彼らが偽の自白を強要されたことは明らかである。彼らの安否を憂える。全てのメディアに対し、彼ら無実のチベット人たちを支援し、正義が行われることを求めてほしい。

これからもこの種の不正な判決が続くとおもわれるので、国際メディアはチベットの真実の姿を研究し見極めて、世界に知らせてほしいとお願いする。

参照:2月3日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7274
2月4日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32982&article=China+is+playing+with+innocent+Tibetan+lives%3a+Kirti+Rinpoche

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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