チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年2月4日
遺灰を家族の下に届ける途中、焼身者の写真を掲げた僧侶拘束
去年11月4日に焼身・死亡したドルジェ・ルンドゥップ(最近新しく伝わってきた写真)
昨年11月4日、北京で十八大会が開かれようとしていたとき、1人の若者がレゴンの街中で焼身抗議を行った。これを目撃したチベット人たちは直ちに倒れ燃え上がる若者の回りを囲った。火を消そうとするものはいなかった。それは焼身者の意志を尊重してのことである。また、同じレゴンで焼身したロンウォ僧院僧侶ジャミヤン・ペルデンが長く苦しんだ挙げ句死んでしまったことを知っていたからだ。チベット人たちは部隊が押し掛け彼を連れ去ろうとすることも身体を張って阻止した。
ロンウォ僧院裏で行われた葬儀には何千人ものチベット人が集まった。そこで若者の父親は群衆に向かって以下のような話をしたという。「自分の息子は人のためにこうして亡くなったのだから、私は苦しまない。息子は自分の依願を成就したからだ。レゴンの僧侶、俗人たちよ、今日はこれ以上問題を起こさないようにしてほしい」と。これを聞いて、多くのチベット人が涙を流したという。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51768291.html)
葬儀が終わった後、遺灰は大勢のチベット人が列を作り、彼が住んでいた家まで運ばれた。この時列の先頭には焼身者ドルジェ・ルンドゥップの写真とダライ・ラマ法王の写真が掲げられていた。
で、今回レゴンでこの焼身者ドルジェ・ルンドゥップの写真を掲げていた僧侶とダライ・ラマ法王の写真を掲げていた僧侶が連行されたという。
TCHRD(チベット民主人権センター)リリース等によれば、今月2日、レゴン、イェルション(གཡེར་གཤོང་)僧院の僧侶ヤーペル(ཡར་འཕེལ་42)と僧侶ダヤン(སྒྲ་དབྱངས་)を警官が連行し、長時間に渡る尋問を行った。
僧ダヤンはその後、彼自身病気であり、また彼は病気の母親の面倒も見なければいけないということで解放されたという。
警官は僧ヤーペルには刑期が与えられるであろうと言ったそうだ。僧ヤーペルは焼身したドルジェ・ルンドゥップの伯父さんであり、ドルジェ・ルンドゥップの写真を掲げていた。僧ヤーペルは現在レゴン鎮の拘置所に入れられているという。彼の家族は彼の安否を非常に心配している。
葬式に亡くなった人の写真を、その伯父さんが掲げるのも違法なのか?
ますます、文革時代に逆戻りしつつある。
参照:2月4日付けTCHRDリリースhttp://www.tchrd.org/2013/02/china-detains-uncle-of-tibetan-self-immolator-in-rebkong/
2月4日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7276
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)