チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年1月25日
ドゥンドゥップ・ワンチェンが女子刑務所へ
2008年初めに北京オリンピックを前にしたチベット人たちの率直な思いを収録し、これが「ジクデル(邦題:恐怖を乗り越えて)」と題されたドキュメンタリーフィルムとなり世界中で上映されたことにより、2008年3月26日に逮捕され、2009年12月28日に秘密裁判により6年の刑を受けたドゥンドゥップ・ワンチェン。彼はこれまで西寧の労働改造所に収監されていた。
スイス在住の彼の従兄弟であり、ジクデルを編集し広めたジャミヤン・ツルティムが1月15日にドゥンドゥップ・ワンチェンと面会したという家族の話を伝えるところによれば、ドゥンドゥップはこれから同じ西寧にある女子専用の刑務所に送られるという。
これは、異例のことであるが、当局はその理由についてはなにも話てくれないという。ジャミヤンは「この女子刑務所には中国人の女性しかいないという。そこに送る事により他のチベット人政治犯や一般のチベット人受刑者との接触を断つためではないか?」と話している。
ドゥンドゥップ・ワンチェンは2012年に、4、5ヶ月に渡り、独房に入れられていたという。これは辛かったというが、その後健康は回復したとも伝えられている。
「ジクデル」は日本語にも翻訳され、世界30カ国で上映された。彼は最近ジャーナリスト保護委員会から「国際報道自由賞」を送られている。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51761733.html)授賞式には彼の解放を求めて世界各国を廻り続ける妻のラモ・ツォが彼の代わりに出席した。
中国は最近この「労働改造所(ラオガイ)」を今年中に廃止すると発表しているhttp://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20130107/Recordchina_20130107024.html。
もっとも、指導者内部でもこれに反対する勢力があるとも伝えられており、実際に廃止されるかどうかはまだはっきりしていない。今回の彼の移動がこれと関係あるかどうかは不明である。実際彼が普通の刑務所ではなく労働改造所に送られていたということが異例であり、B型肝炎に罹っていると言われる彼にとっては労働改造所での労働は辛いものであったと思われる。今回、これから解放されるのは良い事と思われている。
彼は後1年数ヶ月で解放される予定である。無事に解放されることを願う。
今心配されているのは、彼の撮影を助けたとして何度も拘束され、拷問をうけたラプラン・タシキル僧院の僧ゴロ・ジグメのことである。当局は最近彼に殺人罪の罪を着せ、情報を知らせた者には20万元の報奨金を与えると発表している。現在彼の消息は途絶えたままである。
参照:21日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/dundup-wangchen-01212013145843.html
22日付けVOAチベット語版http://www.voatibetan.com/content/dhondup-wangchen-transferred-to-another-chinaeae-prison-/1588702.html
22日付けTibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10030-2013-01-23-06-18-09
22日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32888&article=China+transfers+Tibetan+filmmaker+Dhondup+Wangchen+to+a+women’s+prison
共同さんが伝えてくれたラモ・ツォの話等:http://blog.livedoor.jp/rftibet/tag/ラモ・ツォ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)