チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年12月18日

井早智代さんの絵 その2

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現在ダラムサラに滞在され、焼身者に捧げる絵を中心に描かれている井早さんのことは前回紹介した。今回は第2回として、大作を3枚とその他最近の絵を2枚紹介する。

最初の3枚はダラムサラに来られる前にオリッサなどインドの他の地に滞在されている時、チベット人焼身のニュースを聞き、描かれたものという。

絵には説明が付けられていなかったが、今回、このブログのために説明を付けて頂いた。(絵をクリックすればさらに大きくして見ることができる)

ihaya 1

74cmX120cm

Wishing Tree – 2012年2月、オリッサ州のひなびた海辺の町、プリーで制作していたとき、インターネットで焼身自殺のニュースをみるたびに体に熱さを感じるほど胸が痛み、そのとき浮かんできたのが望みを託しているように手を天にのばしている赤と白の姿でした。赤は火、白は浄化。灼熱の痛みがなくなるようにと願いながら描きました。何も助けられず、どうしようもなく、描き始めました。

木は、プリーの近くの 漁村の村で見た大きな古い木で、それは女の人たちの願いを叶える木と教えられました。実際のその古い木には赤い腕輪、リボン、網が枝に何十も巻き付けられていて、説明を聞く前にそれが女の人たちの木であることを感じました。

高天原で火の赤に身を捧げた人、願いをかなえる赤色の木。チベットにこのような木はないかもしれないが、その木が望みの象徴として出て来たのではないでしょうか。

ihaya 2

74cmX120cm

4 rivers and 6 mountainsー この作品もオリッサからはじまりました。4つの川6つの山脈というのはカンパゲリラ組織の名前ですが、元々はチベットのカム地方を表すのだと聞きました。たくさんある壷は人間の命、心の象徴として描きました。焼身自殺のことを聞くたび、白色の人影が増えていきました。描きながら広大な大地、源の河、遥かなる山脈のなかで生きる人たち、生と死のサイクル、苦しみのことを想いました。

ihaya3

97cmX195cm

Crossing - 真ん中にある火は、悪を焼き尽くすbon fireであり、バラナシでみた火葬の火であり、我が身を焼いてプロテストした人々の火でもあります。この風景はラダックでよく見る風景で、初めて行った時から、無限を感じ圧倒されました。乾いた土の大地に点々と土煉瓦でできた死んだ人を火葬する’箱’がつくられていて、水があるところには緑があり人が生きている。生と死のコントラストがはっきりしていて、さらけ出されている。

この風景を描きながら行ったことのない地続きのチベット、そこで自由を求めて死ぬ人たち、苦しみながら生きる人たち、単身ラダック側からチベット入りして逮捕された友人、母国に再び戻ることなくインドで亡くなった友人のおじいちゃんおばあちゃんの姿が浮かんできました。

281365_10151402987020337_324337356_n12月16日制作。

「この絵を、平和と自由と他の人々の幸せのために自らの命を犠牲にした人々へ、不正な暴力により殺された人々へ、今も人間の尊厳を守るために立ち上がり続ける人々へ捧げる」

285748_10151316955910337_592190908_n「10月23日サンチュで焼身、死亡したドルジェ・リンチェン、57歳に捧げる」http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51766632.html

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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