チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年12月17日
ツェンツァで4千人が焼身者への祈り / ザチュカで非暴力を誓い武器破棄
最近、アムド、ツェンツァ(མདོ་སྨད་རྨ་ལྷོ་ཁུལ་གཙན་ཚ་རྫོང་青海省海東地区尖扎県)で、チベットのために焼身した人々へ捧げるマニサガ(全員で決められた数になるまで観音の真言であるオンマニペメフンを唱える)と祈願会が行われた。
この祈祷会はツェンツァの街から15キロほど離れたルギェル村にあるマニ堂の中で、地区のラマであるアラ・ラデ・リンポチェ(ཨ་ལགས་ལྷ་སྡེ་རིན་པོ་ཆེ་)を導師として迎えツェンツァ周辺のチベット人約4000人が集まり、3日間に渡り続けられたという。
玉座にはこれまでにチベットが自由になるために中国政府に抗議し焼身した人々の写真が掲げられ、多くの灯明が灯された。
もちろん当局はこの集会を禁止したが、地元のチベット人たちは団結し、脅しにもめげず開催にこぎつけたという。他の地区でも同様の祈祷会が予定されているというが、当局もこれを阻止するために躍起になっているという。
参照:16日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7081
16日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/public-prayer-held-in-malho-despite-restrictions-12162012103820.html
最近、カム、ザチュカ(ཁམས་རྫ་ཆུ་ཁ་セルシュ、四川省カンゼチベット族自治州石渠県)でゲミン僧院の僧院長ドゥンドゥップ・ニマと地域のラマ、トゥルクたちの呼びかけにより、1000人ほどが集まり、武器を身につけず、非暴力と品行方正な生活態度を誓うための集会が開かれた。そして、その場に1000点以上のナイフ等の武器が集められ、焼却処分にされたという。
集会ではチベット人の慈悲と愛に基づく連帯が強調され、世界に平和な民族として知られるチベット人の名に恥じない行動をとることが誓われたという。
この種の武器破棄のイベントはカムを中心にこれまでも何度も行われている。時には武器とともに毛皮類の破棄、焼却がセットのこともある。これはかねてより、ダライ・ラマ法王が「チベット人が毛皮や武器を身につけていることは恥ずかしいことである。これらは破棄されるべきだ」とおっしゃっていることに答えて行われているのだ。
当局は法王の言葉に従うこのようなイベントを政治的なものと判断し、度々このようなことを行った指導者を拘束している。
このように住民が率先して武器を破棄するというのは世界的に他には聞いたことがない。廃刀令とか武装解除とか、権力者によりこのようなことが強制的に行われるということはあるが、住民は普通一旦手に入れた武器を簡単に手放すということはない。特に、チベットのように敵対勢力により弾圧されている地域でこのようなことが行われているということは本当は注目に値する。
アメリカで最近、また学校に銃を持った男が乱入し20人以上の子供や先生を射殺したという事件があった。しかし、それでも、アメリカ人は一旦持った銃を手放さないであろうというのが大方の見方だ。アメリカで住民が率先して銃を廃棄処分にしたというニュースなんてありえないのだ。
参照:14日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7064
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)