チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年11月28日
25日に焼身・死亡した17歳の尼僧サンゲ・ドルマ 辞世の句 「お戻りになられた」
尼僧サンゲ・ドルマの辞世句(これは彼女の写真と共に本文を書き出したものである)
17歳の尼僧サンゲ・ドルマは11月25日の夜、ツェコ県ドカルモ郷で焼身抗議を行い、その場で死亡した。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770783.html
夜遅くのことであり、目撃者が少なかったのか焼身の状況など詳細は伝わっていない。
ただ、彼女は家に遺書を残していた。丁寧に写真と共に封筒に入れられていたという。
遺書は詩句である。「お戻りになられた」と題されている。その中で彼女は「私のラマ(ダライ・ラマ法王)がお戻りになられた」と歌い、チベット人たちに希望を捨てず、明るい未来を夢見て闘いを続けるべきだと説く。
焼身を決心したその夕方、空を見上げた時、彼女には本当に法王がお戻りになった姿が見えたのかも知れない。
亡命したチベットの子供がダラムサラの一時収容所で描いた絵(2枚とも)。
お戻りになられた
チベット人たちよ 見上げよ
黄昏の蒼い空を 見上げよ
白い雪山の天上の天蓋のような
私のラマがお戻りになられたチベット人たちよ 見上げよ
雪山の頂を 見上げよ
白い雪獅子がお戻りになった
私の雪獅子がお戻りになったチベット人たちよ 見上げよ
上方の広大な森林を 見上げよ
美しいトルコ石の色した草原を見よ
私のインドの虎がお戻りになったチベット人たちよ 見上げよ
上方の雪山に囲まれた国を見よ
雪山の国の時代がはじまった
チベットは自由で独立しているギャワ・テンジン・ギャンツォ(ダライ・ラマ法王)
遠い国にいらっしゃる間は
世界中を巡られて
苦しみの底にある赤い頬したチベット人を
暗闇から救う祈りを続けられるパンチェン・ラマは獄に繋がれ
獄の中から外をご覧になり
我が雪山の国に
喜びの太陽が昇るを祈られる雪山の国の幸せのために
「雪山の子である愛すべきチベットの男女よ
自分たちが勇敢なチベット人であることを忘れるでない」
サンゲ・ドルマより
と書かれていた。
自分の手に「独立国チベット」と書かれている。
参照:27日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6966
自宅に安置されたサンゲ・ドルマ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)