チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年11月28日
<速報>27日にもンガバ、ゾゲで焼身、死亡 内地88人目
ダラムサラ・キルティ僧院の内地情報係り、僧ロプサン・イシェと僧カニャク・ツェリンが伝えるところによれば、11月27日、現地時間午後6時半頃、アムド、ンガバ州ゾゲ県キャンツァ郷(རྔ་པ་རང་སྐྱོང་ཁུལ་མཛོད་དགེ་རྫོང་རྐྱང་ཚ་四川省阿坝州若尔盖县降扎乡)の役場前でケルサン・キャプ(སྐལ་བཟང་སྐྱབས་)、24歳が中国政府のチベット弾圧に抗議する焼身を行い、その場で死亡した。
目撃者によれば、彼は役場の前に来る前から身体にガソリンを掛け、様々なスローガンを叫んだ。役場の前に来て初めて火を付け、炎に包まれながら「ダライ・ラマ法王に長寿を!キルティ・リンポチェに長寿を!」等と叫んだ。
遺体は付近のチュギュショカやケギュショカの人々が家族の下に届け、現在デンパ僧院とギェルギェ僧院の僧侶たちが法要を行っている。
ケルサン・キャプはゾゲ県キャンツァ郷グショカのドワメゲ村(རྔ་པ་རང་སྐྱོང་ཁུལ་མཛོད་དགེ་རྫོང་རྐྱང་ཚ་ཡུལ་ཚོའི་སྒོས་གཤོག་ཀའི་མདོ་བ་མེ་དགེ་སྡེ་པ་)出身。父の名はドギェル、母の名はアチュ。彼は幼少より家の遊牧の仕事を手伝い、学校には一度も通っていない。性格はおとなしく、無口な方であった。
数日前から回りの人たちに「自分は焼身する」と何度か言っていたというが、誰も本気でするとは思っていなかったという。焼身の前日、放牧地からドワメゲに帰り、次の日の朝キャンツァ郷まで3キロ程歩き、夕方そこで焼身した。
現在キャンツァ郷には軍と武装警官が大勢押し掛け、厳重な警戒が敷かれている。
なお、このゾゲ県キャンツァ郷は四川省ンガバ州内ではあるが、26日にも焼身があった甘粛省ルチュ県のすぐ隣であり、非常に近い場所にある。
参照:27日付けTibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/9731-2012-11-27-15-48-23
追記:ダラムサラ・キルティ僧院によれば、ケルサン・キャプの葬儀を行うために27日夜10時頃、タクツァン・ラモ・キルティ僧院僧侶40人ほどが駆けつけ、その他、地元のチベット人千人あまりが集まり、遺体にカタをかけ、祈りを続けているという。
部隊も大勢集まっており、電話は切断されているという。
ケルサン・キャプは短い遺書を残していた:
「この世の恩深き父母はじめ兄弟姉妹のみなさん、幸せでありますように。私は雪国チベットに幸せが実現されるために、命を火に投げ出す。ダライ・ラマ法王に長寿を。雪国チベットに幸せの太陽が昇ることが私の願いだ」
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)