チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月23日
またしても歌手が連行行方不明
RFAによれば、今月20日午後7時半頃、アムド、マロ、ソクゾン(རྨ་ལྷོ་སོག་རྫོང་青海省黄南チベット族自治州河南県)出身のチベット人歌手、風刺劇俳優ソクトゥク・シェラップ(སོག་ཕྲུག་ཤེས་རབ་)が突然地元警察により連行された。連行の理由や現在の居所は不明。
人々は彼が普段よりチベットの現状や人々の願いを表現する寸劇や歌を多く発表していたので、これが原因ではないかと推測しているという。
彼の歌は例えば:
以下は2010年に彼が発表した亡命政府の首相選挙に関する寸劇である。あいにく方言が強く私には聞き取れない。
チベット人歌手が中国当局により連行されたのはこれで何人目であろう。2008年以降10人は下らないと思われる。ある者は数ヶ月拘束され、しこたまお仕置きを受けた後解放され、ある者は数ヶ月からひどい時には1年後に刑期を言い渡される。家族が彼の生死と行方を知るのは刑期が確定した後という場合が多い。近々のケースは今年8月に拘束されたプルジュンhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51758601.htmlだが、彼は今も行方不明のままだ。
特に2008年以降、チベット人たちは恐怖に打ち勝ち、圧政を糾弾し、自分たちのリーダーはダライ・ラマ法王であることを主張し始めた。多くのチベット人歌手たちが、人々の心を代弁し法王への思慕、チベット人としての誇りを歌った。そのような歌手は勇気ある者として人気を博す。もちろん、当局に睨まれ拘束されるということもある、拷問も受ける。監獄に入れられる。それでも、次々と若い歌手が後に続き、自由を求める歌を歌い続ける。彼らの影響力は絶大である。
参照:21日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/performer-09212012161719.html
22日付け同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/chinese-police-arrested-tibetan-artist-09222012150311.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)