チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月22日
ジェクンド中心街に広い土地建物を持つ商人がビルを壊され行方不明
<写真>去年4月、ジェクンド(玉樹)のケサル広場に千人以上のチベット人が集まり「不当な土地収用に抗議」するデモが行われた。
チベットでは成功した商人が当局に睨まれると、冤罪で逮捕され財産を没収されるということがよくある。例えば、2010年にはラサの豪商ドルジェ・タシ(*1)は亡命側に寄付したという罪を着せられ無期懲役の刑を受け、600億円と言われる資産を取り上げられた。環境保護家としても有名であった古美術商カルマ・サンドゥップ(*2)は文化財盗掘の罪を着せられ15年の刑を受けた。2人とも貧しいチベット人たちを助ける慈善家としても有名であった。
RFAによれば、最近、ナンチェンやジェクンドで有名な商人が拘束され、自宅や彼のホテルが取り壊されたという。彼もチベット文化を擁護し、貧しいチベット人を助ける慈善家として人気のある商人だったという。
ナンチェン・タシ(ནང་ཆེན་བཀྲ་ཤིས་47)は「チベット文化、宗教、言語を擁護する」ことで有名であり、また「貧しい人々を助け、学費の援助を行っていた」と地元の報告者は伝える。
9月12日、彼のジェクンドの家に夜中一団の男たちが現れ、家を取り壊すと言った。その時すでにタシは拘束された後で家にはいなかった。「家族(妻のブデ、息子のシェラップ・ドルジェとソナム・トプギェル、娘のヤンゾン)はこれに抵抗したが結局拘束され、その後ブルドーザーで家とホテルが完全に取り壊された」。
7年ほど前、タシはジェクンド中心街の四つ角に300万元(約4000万円)で広い土地を購入しそこに自宅、ホテル、レストラン等を建てた。「2010年の大地震の際、彼のビルは被害もなくそのまま残った。しかし中国当局は(再建計画に基づく)道路拡張のために彼に土地を明け渡すよう命令した」「彼は残りの部分をそのままにするという条件で、道路沿いの土地を明け渡すことを了承した。その時、わずか3万元の補償金が支払われた」という。
「タシは地震が起った後、3ヶ月間行方不明となっていたが、彼がその時成都に連行され、『他のチベット人たちを、当局に歯向かうようけしかけた』としてひどい拷問を受けていたことが後で判明した」と報告者は伝える。現在も彼は行方不明のままである。
*1:ドルジェ・タシについては>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51492769.html等
*2:カルマ・サンドゥップについては>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51492769.html
http://blog.livedoor.jp/rftibet/tag/カルマ・サンドゥップ等
参照:19日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/disappears-09192012154850.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/tibet-09202012155337.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)