チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年6月24日

<貴重ビデオ>20日焼身のガワン・ノルペルが付き添いの僧侶に語る

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先の20日、ジェクンド州ティドゥ県ザトゥで焼身した2人の若者の内、ガワン・ノルペルはその場で死亡せず、その後チベット人たちより近くのシルカル僧院に運び込まれた。以下のビデオは昨日亡命政府に届けられたものである。ガワン・ノルペルが僧院内に運ばれた後、見守る僧侶に話掛けている。

チベットの現状を嘆き、焼身の目的を語り、チベット語を守るべきことを訴えている。彼を匿い、治療を施してくれた僧院に対し感謝の意を示す。また、一緒に焼身したテンジン・ケドゥップの消息を何度も尋ねる。それに対し、傍の僧侶は「彼は大丈夫だ、家にいる」と本当のことを伝えない。彼はその言葉を疑い、「本当は死んだのではないか」と泣きながら繰り返し何度も尋ねている。

以下、ビデオのコメント欄に中国語で内容要約が書かれていたものを@uralungtaさんに頼み訳してもらったもの。(彼のチベット語は訛が強く、私にははっきり聞き取れなかった)

ガワン・ノルペルは言う、(録音)「………言論の自由がありません、すべては自由のためです……国の言葉……自由……だから私は……私自身に炎を放ったのです……火を放ったのです! 私の国(プーカンチェン=雪域のチベット)ではいったいぜんたい何が起きているんですか? 私のプーカンチェンはどうなっているんですか?(号泣)……私の義兄弟のテンジン・ケドゥップはどうしていますか? ….私と義兄弟のテンジン・ケドゥップ(がしたこと)は、ほかでもない、プーカンチェンのためなのです。私たち2人はプーカンチェンのために、……もし私たちに自由がなく、言語文化も民族特性もなくなってしまったら、それは私たちの恥辱です、だから私たちは必ずよく努力して学ばなくてはならないのです。一つの民族にとって、自由と言語と民族特性と文字などは絶対に必要なものなのです。もし言語と文字がなくなってしまったら、あなたはいったい何民族なんですか、ギャ(漢人)ですか、プー(チベット人)ですか?」

この後、Tibet Netに会話の全訳が英語で発表された。http://tibet.net/2012/06/23/new-video-footage-of-latest-self-immolation-incident/

ガワン・ノルペルを匿っていたシルカル僧院には、この後部隊が到着し、彼は西寧の軍病院に運ばれた。僧侶たちはどうしても付き添いたいと懇願し、2人が西寧まで付き添った。しかし、病院には入れてもらえず、現在の彼の容態は不明である。(この部分参照21日RFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/hospitalized-06212012160109.html

焼身後、その場で死亡したテンジン・ケドゥップの遺体は同じくシルカル僧院に運ばれ、僧侶たちにより法要が行われた。予定では慣習通り3日後の23日の11時に葬儀が行われることになっていたが、22日に役人と軍隊が僧院に現れ、「すぐに葬儀を行わない場合には強制的に遺体を持ち去る」と言われ、仕方なく23日の早朝5時に葬儀が行われたという。(VOT放送より)

当局は2人の焼身の写真やビデオがすぐに外国に送られたことを知り、これを行った者の捜索を始めた。その場にいたと思われるチベット人やシルカル僧院僧侶たちに対する尋問が続いているという。

2人の家族、親戚、友人が拘束され、シルカル僧院は厳重な警戒の下に置かれている。

ザトゥには軍が増強され緊張が高まっている。

その他参照:23日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/otherprograms/newsanalysis/sound-bite-of-ngwang-norphel-06232012123715.html

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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