チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年1月31日
<貴重映像>ザムタン公安前で抗議の声を上げるチベット人たち/CNNのチベット潜入レポート
上のビデオはRFAが今日発表したもの。在インドのジャミヤン・ギャンツォを通じて現地から入手した貴重なビデオ。
冒頭のチベット語による説明によれば、この映像は26日の午後5時頃、ゴロ、ザムタン県バルマ郷の公安の前で撮影された。この時2000人程のチベット人が集まり中国政府への抗議の声を上げた。午後9時には1万人程に膨れ上がったと書かれている。私には、叫びの中で「ダライ・ラマ法王に長寿を!」というのだけが聞き取れた。
このきっかけは先にもお伝えしたように、最初タルパという若者が抗議のチラシを張り出し、彼を逮捕しようとした警官隊が、これを阻止しようとした住民に向かい発砲し少なくとも1人ウゲンという若者が射殺され、多くの者が負傷した。その後、逮捕されてしまったタルパの解放を求め住民が公安事務所に押し掛けたという、映像はその時のものと思われる。
ただ、ある情報によれば、発砲があったのはこの公安前であるという。もしそうであれば、この映像はその発砲の前であろうか?
英語版は以下>http://www.rfa.org/english/video?param=value&storyId=TibetUnrest2
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CNN:チベット族居住地域で衝突続く、取材陣は空港で拘束
同じく今日発表されたビデオをもう一つ紹介する。この前半部分は、おそらく発砲により死者が出て緊張が伝えられるダンゴ方面に夜中、成都から向かった時のものと思われる。しかし、途中の検問に引っ掛かり引き返している。後半、ここも厳重な警戒態勢が引かれている成都のチベット人街を取材し、僧侶2人にインタビューを行っている。この後、彼らは空港で5時間拘束され、いくつかの映像を取り上げられた。また、このレポートが放映された時、中国のテレビはブラックアウトしたという。
>http://edition.cnn.com/2012/01/30/world/asia/china-arrest-grant/index.html
実はこのビデオと記事は日本語となり発表されている。
>http://www.cnn.co.jp/world/30005456.html
ただ、記事は相当違い、背景説明が大部分をしめる。また、一つ気になるのは僧侶が言った言葉がなぜか「飲食店で働くチベット族の女性」の話として書かれている。単なる誤訳なのか何かの意図があるのかどうか分らない。
英語版にしかない、僧侶の言葉はそれなりに重いものと思われるので、以下その部分を訳す。
僧侶たちは警官たちにののしられ、虐められた。もう限界だ、と我々に語った。
「もう耐えきれない。もう限界だ」と1人の僧侶が言う。
彼らは山奥の故郷から遠く離れた所にいる。電話で連絡する事もできず、孤立してると言う。
「帰りたいと思うが帰れないのだ。外に大勢の保安要員がいることは見ればわかるだろう。どこへ行こうが、彼らが見張っている。どこへも行くことができない」と言う。
私たちは「怖いか?」と聞いた。彼は(部屋に掲げてある)ブッダの写真を見て、笑顔を浮かべる。
「説明できない…….でも怖くはない」と。
ポシェットの中に僧侶は精神的指導者であるダライ・ラマの写真を隠し持っていた。もったいなさ過ぎて見せてはくれなかった。このポシェットは夢を運んでくれる、と言う。
「我々は全てのチベット人が望むことを望んでいる。ダライ・ラマ法王がチベットの宮殿にお帰りになることをだ」
彼らは同胞たちが焼身抗議を行っていることを知っていた。彼らのことを支持し、中国がチベットから出て行くまで、これは続くと断言した。
中国政府にとって彼らはチベットを中国から分離しようという所謂「分裂主義者」となる。
インタビューの間中、私たちは監視されていた。その後、車は追跡された。ドライバーは家族が電話で脅されたと言う。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)