チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年11月24日
ンガバ・キルティ僧院:逮捕と監視は続く
以下、23日に入手した情報として24日付けでダラムサラ・キルティ僧院がリリースしたもの。
今月21日、キルティ僧院僧侶ギャンツォ(རྒྱ་མཚོ་42)が僧房から警官により連れ去られた。拘束の理由や行方は不明。
彼はンガバ県トツィック郷メシップ村ラクツァ家(རྔ་པ་རྫོང་སྤྲོ་ཚིགས་ཞང་རྨེ་སྲིབ་སྡེ་བའི་རག་རྩ་ཚང་)の出身。幼少よりキルティ僧院僧侶となり、現在最終学級1年生。以前当局により強制的に閉鎖された僧院直営学校の先生でもあった。雑誌や新聞等に記事を度々発表していた。各種のチベット字体と絵画に秀でていたという。
10月末にはキルティ僧院カーラチャクラ学堂の元戒律師ロプサン・ゲンドゥン(བློ་བཟང་དགེ་འདུན་48)が拘束され、今も行方不明。
彼はンガバ県トツィック郷カニャック村セゴ家(རྔ་པ་རྫོང་སྤྲོ་ཚིགས་ཞང་ཀ་ཉག་སྡེ་བའི་གཟས་འགོ་ཚང་)出身。幼少時よりキルティ僧院の僧侶となり、現在最終学級4年生。
ンガバの町や周辺には以前にも増し軍隊や武装警官が大勢配備され、至る所でチベット人の身体保安検査を行っている。数日前から自家用車は町の大通りを通行することが禁止され、細い裏道を走るしかないという状況となっている。
20日は地域の暦に従いガンデン・ンガムチュ(དགའ་ལྡན་ལྔ་མཆོད་ཆེན་མོ་灯明祭、ゲルク派の創師ジェ・ツォンカパの命日)ということで僧院では特別の哲学討論会が開かれた。夜、恒例に従えば僧院に大きな飾りのイルミネーションが灯されるが、今年はチベットの自由のために焼身を行い亡くなった人たちを弔うために、僧院に僧侶や一般チベット人が集まり暗い中、灯明だけが灯された。この際にも当局は境内に私服警官を大勢配置し監視を強めた。僧門付近には大勢の軍隊と武装警官隊が集まり、特殊装甲車が10台以上も張り付いていたという。
僧院内には引き続き毎日200人程の監視人が常住し、僧侶の行動を24時間監視している。
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20日のブログでお知らせした、ラギャ僧院の件の続報:
僧院に警官、役人が現れ、集会を強要。その場で「チベット国旗とダライの写真を掲げた者は3日以内に自首せよ。さもなくば、僧院全体が危険な状態になるであろう」と警告したという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)