チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年8月30日
キルティ僧院僧侶プンツォの焼身自殺に関し、仲間の僧侶3人に殺人罪
写真は殺人罪で11年の刑を受けた僧ロブサン・ツンドゥ(Tibet Timesより)
新華社電によれば、四川省ンガバ・チベット族チャン族自治州ンガバ県マルカムの人民中級法院は29日、3月16日に焼身自殺を計ったキルティ僧院僧侶プンツォを僧院に11時間隠し、緊急治療を妨害し、彼を死に至らしめたとして同じキルティ僧院の僧侶ロブサン・ツンドゥ(46)に「故意殺人罪」で11年の懲役刑、2年の政治的権利剥奪を言い渡した。
僧ロブサン・ツンドゥは焼身自殺した僧プンツォの叔父であり、先生でもあった。目撃者によれば、彼は僧プンツォが倒れた後、警官たちが彼に殴り掛かったところを救い出し、僧院に連れて行ったのだという。
さらに30日には、同裁判所で僧プンツォの焼身自殺を「計画し、そそのかし、ほう助した」として、同じく「故意殺人罪」で、仲間の僧侶ツェリン・テンジン(22)に13年の懲役刑、3年の政治的権利剥奪、同じく僧侶テンチュン(21)に10年の懲役刑、2年の政治的権利剥奪を言い渡した。
ダラムサラのキルティ僧院によれば30日に刑を言い渡された2人の僧侶の名前は2人ともロブサン・テンジンであるという。
TCHRD(チベット人権民主センター)は「殺人罪」は不当であり、僧プンツォの焼身自殺は中国当局のチベット人に対する弾圧の結果であるという。
亡命政府のスポークスマン、トゥプテン・サンペル氏は「このような判決はチベット問題を解決するに百害あって一利なしだ。中国政府はチベット白書等で『政府はチベット人の福利を増進し、チベット人は幸福に暮らしている』というが、現実はチベット人たちは弾圧の下で訴えるとこもなく、我慢しきれず、思い余ってこのような絶望的手段に訴えるしかなくなっているのだ。裁判といっても中国の裁判は法律に基づくものではなく、当局が都合の良いように判決をいいわたすだけのものだ。チベット人の人権が守られているならこのようなことは起こらないはずだ」とコメントする。
また、ダラムサラ、キルティ僧院の僧カヤック・ツェリンは「判決は全く不当だ。当局が勝手に都合のいいように作り出した罪でしかない。目的は僧プンツォの偉大な行為を無に帰すためだ。刑期を受けた僧侶たちは3人とも罪となるような動機を持たず、行為も行っていないことは明らかだ」と当局の判決を強く非難した。
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参照:29日付けTCHRDリリースhttp://p.tl/w5j0
同じく30日付けリリースhttp://p.tl/9mUR
30日付けVOTチベット語放送http://www.vot.org/
29日付けRFA英語版http://p.tl/4Mw1
同チベット語版http://p.tl/y1By
29日付けTibet Times http://p.tl/rB2_
30日付け共同>産経: http://bit.ly/qXFaYA
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)