チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年7月31日
ラサで僧侶35人逮捕/ジェクンドで抗議の飛び降り自殺/ゴロで鉱山開発反対デモ/ラプランで偽パンチェン訪問延期
この数日間にチベットから寄せられた情報をいくつか紹介する。
ラサで僧侶35人逮捕
29日のVOT(ノルウェー自由放送)、及び30日付けRFAチベット語版http://p.tl/SyIAによれば、7月19日に習近平国家副主席が出席し行われた「チベット平和解放60周年記念式典」を前にラサでは厳戒態勢が引かれていたが、その中で三大僧院の僧侶など35人が政治的理由により逮捕されたという。
式典を前にラサ市内には至る所に狙撃兵が配備され、各僧院には大勢の保安要員が送り込まれ、僧院から外に出る事が阻止されていた。そんな中、ガンデン僧院から9人、デブン僧院から5人、セラ僧院から12人、ラモチェ僧院から7人、ツクラカンから2人の僧侶が何らかの政治的理由により逮捕されたという情報が入った。現在のところ逮捕された僧侶たちの氏名、行方、逮捕理由等詳しいことは分っていない。
ジェクンドで補償金が少な過ぎるとホテルオーナーが屋上から飛び降り自殺
同じく29日のVOTによれば、ジェクンド(ケグド、玉樹)で7月24日、地震後の都市計画の下、壊される事になった商店やホテルのオーナー30人あまりが、その補償金が少な過ぎると抗議活動を行った。その内の1人ナンチェン・タシは自分のホテルの屋上から抗議の飛び降り自殺を計った。彼は病院に運び込まれ、幸い今の所、命はとりとめた模様。彼の妻もハンストに入っているという。
ゴロで学生400人以上が鉱山開発に反対しデモ
29日付けTibet Times チベット語版http://p.tl/tul5、及び30日付けVOTによれば、最近、ゴロ(果洛)のミリク・ゲトゥン学校の生徒400人以上がゴロの町からアムニェマチェン(マチェンカンリ6282m)峰*近辺にある鉱山まで行進を行い、そこで長年行われている鉱山開発を中止するよう要求した。
さらに彼らは環境を破壊し、人や家畜に健康被害を及ぼす全ての鉱山開発を中止するよう要求した。
これを知って地区の役人や警官が現場に駆けつけ、学生たちに解散を迫ったが、彼らは解散せず、にらみ合いが続いているとのこと。
*この山はカンリンポチェ(カイラス)山、カワカルポ山とともにチベット三大聖山の一つ。
偽パンチェン・ラマのラプラン僧院訪問が現地のチベット人たちの非協力により延期
29日付けRFA英語版http://p.tl/lbKeその他によれば、中国当局は7月中にチベット人言う所の偽パンチェン・ラマ=ゲルツェン・ノルブ(21)を甘粛省サンチュ(夏河)にあるラプラン僧院に招待しようとしたが、地元の反対に遭い、計画を延期せざるを得なくなったという。
偽パンチェンの訪問に先立ちラプランには1000人以上の保安要員が増強され、当局は僧侶や俗人に「喜んで彼を迎え、カタを捧げるよう」要求した。しかし、町の人々の多くはこれを歓迎しない態度を示した。さらに地区のチベット人公務員たちまでこの計画に反対の態度を示した。これに対し、当局は「彼を歓迎しない職員は減給または解雇されるであろう」と脅しをかけたがそれでも多くの職員が不服従を貫いた。この結果、当局は彼の当地訪問を延期または中止せざるを得なくなったという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)