チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年7月28日

雲南北部旅行その10:ナムカタシ(飛来寺)に戻る

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DSC_09583日間、夕方いりびたった宿の台所。

6月20日:歩くのも今日が最後、村を離れ再びナムカタシに帰る日。
写真はトレッキングのベースになってた宿の台所だが、ここが暖かく居心地がいいので歩きから帰って来るといつもここに来てかまどのそばに座ってた。

かまどのそばに座ってる女の子ニマは21歳でゲストの食事をすべて1人で作る。24歳の旦那がいて2人でこの宿を切り盛りしてる。彼女はこの村の出身だが旦那はチャムド、パシュ(八宿)の出身。彼女のチベット語はほとんど理解できなかったが、旦那のチベット語は何とか解った。彼女のおじさんが本当のオーナーだそうで、彼女たち2人はただ働きさせられているそうだ。

宿にはあと2人、若い中国人が働いていた。その中の1人は何とほぼ完璧な日本語が話せた。その女性は数ヶ月前まで日本にいたのだ。東京に6年住んでたと言う。最初IT関係の学校に通い、その後は働いていたと。彼女は日本で貯めた金が無くなるまで旅行しようと、まず昆明からチベットに入った。この村に着たとき、その美しさと人の良さにすっかり魅了され、ずっと居たいと思ったそうだ。彼女が来た時には山は雲一つなく、白く輝き、夜は満天の星空だったと。宿を手伝うからとそのまま居つき、食事と部屋はただにしてもらっているという。「その内かっこいいチベット人の彼氏作るわよ。中国で自然が残ってるのはチベットだけよね」とすっかりチベットが気に入ったようだった。


DSC_0952朝日に映える裏山。

この台所には旅行者やチベット人が入れ替わり沢山入って来る。チベット人の仲間が入って来ると旦那はいつも「こいつは日本って国の人なんだけど、チベット語が話せるんだぜ」と皆に紹介する。みんないろいろ話しかけてくるが、まるでそのチベット語?は理解不能。そんな中、最後の日に現れたごっつい僧侶とは話ができた。彼はラサにちょっと住んだ事があるそうだ。私がダラムサラに住んでると言うと、目を輝かせ、「首相の、、、いやもうすぐ変わるが、、、サムドン・リンポチェは俺の僧院デチェン・ゴンパの出身なんだ。すごいだろう」と話しだす。

DSC_0963蝶を食わえ、鋭い目つきのこの鳥。ダラムサラでも似たのは見た事ある。

で、その僧侶勢いづいて「2008年には役人が僧院に押し掛けて、愛国再教育とかを始めた。ダライ・ラマ法王を非難する書類にサインしろと言われたが、僧侶15人全員がそれを拒否したんだ」と胸を張って誇らしげに話した。私は「それはすごい!で、その後どうなったの?」。僧「みんな諦めて帰って行ったさ。それからも何も無い。この辺はラサとかと違って、役人も大したことないのさ。このデチェン地区のボスのチベット人はなかなか話の分るいいやつだよ」とのこと。

DSC_0967宿に張ってあった、「雲南省:国家二級保護野生動物?」のポスター。

DSC_0969白いシャクナゲ。

朝、8時に宿を出発。世話になった宿の皆に別れを言って、帰路につく。
是非また来たいと思う村だった。

DSC_0971サルオガセの森を抜ける。

DSC_0982ハチドリの一種。

DSC_0998タルチョの森。

DSC_1006峠を越え丘の反対側に出ると足下にメコン川上流が現れる。

DSC_1077ナムカタシに到着。この日、初めてカワカルポのピークを拝む事ができた。

ところで、この写真はホテルの窓から撮ったものだけど、手前に写ってる赤いトラックに注目してもらいたい。このタイプのトラックがこの道をひっきりなしに通る。積んでいるのは同じタイプの石。赤い鉱石。このトラックは夜遅くまで走っていた。ざっと計算で一日に100~200台が通過してると見た。

DSC_1080この赤い石。実は止まってるトラックから一つ拝借して日本まで持ち帰った。ちょっと調べただけでこれは銅原石と知れた。この道の北に新たに開発が始まった羊拉銅鉱山からのものと推定された。
この銅鉱山、確定埋蔵量80万t(銅量)、推定埋蔵量は130万t超(銅量)とのこと。巨大である。ある資料によれば、「2010年の第2期工事完成後の年間工業総生産額は30億元になり、税込み利潤額は5億元になる見込みである」そうだ。

シャングリラからデチェンまで強引とも思える高速道路建設が行われていたが、その理由は観光開発というより、こんな鉱山開発と軍事目的であろうと思われた。

チベットの大地からの泥棒である。

DSC_1095チベット人が乗る車のフロント。カーラチャクラの10の真言を組み合わせた護符ナムチェワンデンがボンネットに大きく描かれ、フロントガラスの周りにも同様の護符。
そして真ん中には今チベットで大流行りの「ソーラー・マニコロ」が回っている。
これ、日本でも流行らないかな~。欧米のチベットファンの中では流行の兆しがあると、、、聞いたような。

DSC_1117ナムカタシにある八相チュテン(仏塔)。
八相とはブッダの人生の8つのトピック、降兜率、入胎、出胎、出家、降魔、成道、転法輪、入滅。この8相を象徴する、それぞれ違った形の仏塔をセットで並べるということが、チベットではよく見られる。
奥が降兜率塔、手前が入滅塔。

DSC_1102ナムカタシ(吉祥虚空)から眺める、カワカルポの姫、メンツンモ(6054m)峰。まさに自然の巨大な仏塔の如し。

DSC_1152黄昏の中に聳える主峰カワカルポ(6740m)。

DSC_1158連山第2の高さ6379mのダドゥル・ワンチュック峰。ダドゥル=敵を組み伏せる、ワンチュック=力を持つもの。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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