チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年7月13日
ナンチェンで僧侶たちが「チベット解放60周年祝賀ゲーム大会」に抗議のデモ
ナンチェンと思われる写真(The Tibet Postより)
ジェクンド(玉樹)の隣のナンチェンは地震の被害も被り、また隣町ということで救助のためジェクンドに向かった僧侶や一般人も多い。そんなナンチェンでの話。
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7月13日付けTheTibet Post International:http://p.tl/k7cxによれば、カム、ナンチェンで中国政府が言う所の「チベット平和解放」を祝うための「ゲーム大会」を地方当局が計画していたが、開催日を前に地元のチベット人がこれに反対する抗議活動を行った。
ゲーム大会はダライ・ラマ法王の誕生日である7月6日から開催されることになっていた。現地のチベット人たちは、この日ゲームが始まる事に対し「これはダライ・ラマ法王に不敬を現すためだ」と見なしていた。
ナンチェンのあるチベット人によれば、一般のチベット人や特にサマン僧院の僧侶たちは「2010年のジェクンド(ユシュ、玉樹)地震とその後の大きな苦しみ」に言及し、祝賀会をボイコットしたという。このゲーム大会はナンチェンのチベット人たちが「チベット開放」の日に幸せに暮らしているという意図的イメージを演出するため仕組まれたものだ、と街の人々は信じている。
ナンチェンの僧侶たちは地方当局に対し、「ゲーム大会を開くのはいいが、それは他の土地でやってほしい。ナンチェンで祝い事をやれるところはどこにも無い。協力を拒否する」と言明した。
その上、サマン僧院の僧侶300人以上が当局の計画に抗議するデモを行った。声を上げながら僧院を出て行ったが、その後現在まで彼らは僧院に帰らず、行方不明という。しかし、僧侶たちはそれぞれの田舎に帰っているか、地元のチベット人たちに匿われているのであろうと信じられている。
ダライ・ラマ法王の誕生日にはナンチェンでも小規模ながら地元チベット人による祝賀会が行われた。このため街が緊張したともいう。
僧侶たちの抗議活動を知って、当局はゲーム大会を7月10日からに延期した。
当局は僧院に帰らぬ僧侶たちに対し、「命令に従い即時に僧院に帰らない場合は厳しい罰則が待っている」と脅しているそうだ。
このこともあってナンチェンでは緊張が高まっており、地元のチベット人たちは「次に何が起きるかわからない」と警告している。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)