チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年7月8日

ダンゴのチベット人作家ペマ・リンチェン7月5日逮捕、激しい暴行を受ける

Pocket

001(写真1)若いチベット人作家ペマ・リンチェン

ウーセルさんは昨日のブログで新たに1人のチベット人作家が逮捕されたことを報告されている。今のところ、まだ他のチベット系メディア上では報告されていない。
これを、うらるんたさんがさっそく翻訳し、ブログに掲載して下さった。http://p.tl/tqd3これを以下転載させて頂く。
(19:30に追記)

原文:http://p.tl/2xuK「看不見的西藏(invisible Tibet)」2011.7.7「藏人作家白马仁青于7月5日被捕,遭到毒打」

翻訳:@uralungtaさん
(一部、書名の読み方tonbani訂正)

———————————————————–

002-1(写真2)ペマ・リンチェンが書いたことにより罪を被ることとなった本『トゥ(看/見ろ)』

<チベット人作家ペマ・リンチェン7月5日逮捕、激しい暴行を受ける>

25歳のチベット人作家ペマ・リンチェン(Pema Rinchen/筆名「ドゥクツェル<毒刺>」*1)は、カンゼ地方ダンゴ[*2]の出身だ。

2011年7月5日白昼、ペマ・リンチェンはダンゴで県公安局の警察官に拘束され連れ去られた。彼は激しい暴行を受け、2日目(7月6日)にダンゴの県医院へ救急患者として運び込まれた。


003(写真3)ダンゴ(Drango)の公安局が発行した「拘留通知書」(逮捕状)

 ジャンダ(Jangda/卡娘郷)のロンダ〈音訳*3〉の家族は、その知らせを耳にして泣きながら病院に駆け付けたが、病室の外には大人数の武装警察と警察官が立っていて、見舞うことも許されなかった。現在のところ、ペマ・リンチェンは生死も不明である。

 ペマ・リンチェンは幼いころ出家した経験があり、その後還俗して作家となり、東チベットのカム地方では若い新世代のチベット人作家として比較的名が知られている。彼は今年初め、『トゥ(看/見ろ)』と題するチベット語書籍を自費出版した。主な内容は中国共産党のチベット地域に対する政策と行いについての検討と批評で、2008年にチベット全域に広がったチベット人の抗議活動に対する弾圧や、ジェクンド地震のさなかに起きたことにも及んでいた。かつ、ペマ・リンチェンは2008年に抗議して重い刑を受けたチベット人にも取材していた。

 『トゥ(看/見ろ)』は2000冊印刷され、ペマ・リンチェンが逮捕される前にチベット全土の各地に広まり、ほとんど寄贈し終えていた。

 ダンゴの県公安局は7月6日午後、ペマ・リンチェンの家族に逮捕令状を提示した。(逮捕状には)ペマ・リンチェンについて「民族仇恨扇動容疑(民族の憎しみを扇動した容疑)で」現在「ダンゴの県拘置所に拘留する」としている。担当者の署名は惠小林と多吉仁真(ドルジェ・リンジン)になっていた。

 私は先月、ブログで『四川省当局に逮捕、拘束されたり判決を受けたチベット人作家と教師10人の記録』と題して記事を書いたばかりだが、当局のチベット人知識層に対する弾圧は歴然で、おさまるどころか、ますます激しさを増している。

 ここにおいて、再度、国際的報道メディアや国際ペンクラブ、国際人権団体に、注目と支援、救助を呼び掛ける。

 以下の画像は、ペマ・リンチェンの著作『トゥ(看/見ろ)』の序文や目次などである。
005

 ■逮捕状の本文訳

 炉霍県公安局<拘留通知書>
 炉公拘通 字〔2011〕21号
 真呷
 『中華人民共和国刑事訴訟法』第六十一条の規定に基づき、わが局は2011年7月5日20時において、扇動民族仇恨の嫌疑でペマ・リンチェンを刑事拘留し、炉霍県看守所において身柄拘束する。
 (公安局印)2011年7月5日

006
———————————–

 *1 チベット語のドゥクツァ(毒草)、または中国語の毒刺(毒針で刺す)、あるいはその両方を掛け合わせた意味を持つペンネームかもしれない

 *2 中国の行政区分で四川省甘孜自治州炉霍県

 *3 原文は降達村(音に漢字をあてたとみられる)。地図上ではジャンダ内の集落名「尽達(ジンダ)」または「辛達(シンダ)」か。

007< 追記> CTA(チベット亡命政府オフィシャルサイト)より抜粋。http://p.tl/SJuY

ペマ・リンチェンは彼の著書「トゥ(看/見ろ)」の中で、2008年の平和的抗議を無惨に弾圧したことと、2010年のジェクンド(玉樹)地震の復興計画を悪用していることに言及しながら中国共産党のチベット政策を強く非難した。

彼は詩編の中に、「中国共産党によるチベット侵略、チベット人に地獄の凄惨さを与える法律、チベットの天然資源を略奪し、チベットの平和な風景に深い傷跡を残す」と記す。

さらに「チベットにいるチベット人の苦しみは堪え難い、血の臭いのする過去、悲嘆すべき悲劇的現在、未来は恐怖が故に」と嘆き、

「祈願する神にもしも力があるならば、今こそチベット人の苦しみを救う時。
願う人の祈りと真実に力があるなら努力により状況は改善されるかもしれない。
口で自由と民主主義を唱え、実際には何も行動しないなら、それはただの空しい言葉に過ぎない」と。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)