チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年5月28日
南モンゴルが燃えている
南(内)モンゴルはチベット、ウイグルと共に中国政府の圧政、弾圧を長年受け続けて来た地域だ。内モンゴル自治区と名のつくものの、中華人民共和国建国以来60年間にわたる漢民族移入により漢民族が人口の80%以上を占めるに至っており、モンゴル人は完全に少数民族に転落している。チベット、ウイグルと同じく、共産党政権による言論弾圧、文化弾圧、政治的弾圧等の差別的人権弾圧の元にモンゴル人たちは苦しめられ続けている。
しかし、モンゴルではこれまで民族が団結した組織的デモが起こることは稀なことであった。今回、一つの事件を契機にこの弾圧への反発がある沸点に到達したかのようである。
今回の蜂起の契機になったのは5月10日、内モンゴル・シリンゴル盟の草原で、牧畜を営み、環境破壊、乱開発に反対するメルゲン(メリゲン)さんという35歳の男性が、大型トラックにひき殺されたという凄惨な事件。23日、この事件に対する政府の対応に不満を表明し、環境破壊をやめよというデモが起こった。デモは27日時点で5日連続行われた。参加者もモンゴル人学生が主体となりはじめ、主張もモンゴル族住民の人権や尊厳を守るよう抗議するという趣旨に変化していった。デモの横断幕の中には「祖国(モンゴル)を守ろう」というものも現れている。
現地住民の話によれば、27日の朝にはシリンホトの町に「戒厳令」が布かれたという。それにも関わらず、その日も学生、遊牧民300人以上がデモを行った。デモ隊に武装警官が乗った車が故意に突っ込み、4人の学生が負傷し病院に運び込まれた。その内1人の女子学生の足は完全に潰された。また、武装警官隊との衝突で10人が負傷。30名以上が逮捕されたという。
この部分参照:27日付ロイターhttp://p.tl/ktTt
27日付けRFAhttp://p.tl/OYgZ
この件と来る30日に世界的に呼びかけられている抗議行動に関し@uralungtaさんが適切・詳細なまとめをブログに掲載されているので、是非以下にアクセスし、それを読んでもらいたい。
5月27日付け、ちべログ@うらるんた:http://p.tl/KjEw
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)