チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年5月25日
ダライ・ラマ法王、「儀礼的国家元首」要請を受け入れず
ダライ・ラマ法王は今日、亡命チベット人たちからの「儀礼的国家元首(ceremonial head of state)」として残ってほしいという要請を却下された。
法王の政治的引退表明を受け、憲章改正を話あう「第2回特別全体会議」が昨日まで4日間行われていた。会議は全会一致で法王に「儀礼的国家元首」となることを要請すると決定した。しかし、参加者全員と謁見した法王は、今日この要請を受け入れる事はできないと述べられた。
全体会議ではほぼ法王がこの要請を受け入れて下さるという前提で進められていたらしく、細かい権限移行については議論されていなかった。これは明日から開かれる特別国会で話し合われるようだ。
ここでいう「チベットの国家元首」の主な役割とは:
1、チベット問題の納得いく解決へ向けての努力を担う。
2、世界のリーダーや組織と会い、チベットの人々の利害を代表し発言する。
3、チベットの人々を利するために各地域代表と特使を任命する。
4、チベットの人々の重要問題に関し亡命政府に助言を与える。
ま、はっきり言って、3番以外これらのことは元首という名前を与えられようがいまいが法王はこれからもこれらの役割はしっかり果たされると思われる。
また、首相が直接選挙で選ばれるようになった後は、すでに今回言うところの儀礼的国家元首のような存在として振舞われて来た。
法王の望みはもっと完全・徹底的な引退、民主化であるようだ。形の上でも立憲君主制は時代遅れと思われているのかもしれない。
追って、この件について法王自身が説明されるであろう。
余談だが、政府の名称変更は会議で否決された。
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参照:5月25日付けphayul.com:http://p.tl/L0ei
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)